Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション4 携帯超音波検査による診療体系の変化−診療報酬も含めて−

(S145)

大学附属病院におけるポータブル装置を用いた緊急超音波検査の実態調査

Emergency Ultrasound Examinations using Portable Scanner in University-based Hospital

中田 典生, 宮本 幸夫, 福田 国彦

Norio NAKATA, Yukio MIYAMOTO, Kunihiko FUKUDA

東京慈恵会医科大学放射線医学講座

Department of Radiology, Jikei University

キーワード :

【目的】
近年ポータブル超音波は実用化段階を迎えその機種も増加し,現在はその使用方法について検討がなされている最中である.今回我々は,本学附属病院においてポータブル超音波がどのように使用されているか,その実態を調査し検討したので報告する.
【対象および方法】
対象は平成23年4月5日から12月7日までに各診療科から超音波診断センターへ依頼があったものの何らかの理由で入院ベットサイドないしは外来診察室へ出向してポータブル超音波装置にて検査を行った69例である.検査装置は富士フィルム社製Fazone CBを使用した.
【結果】
依頼検査部位集計の結果は,腹部31例(44.9%),頚部16例(23.2%)[頚部の内訳としては頚部甲状腺・副甲状腺14例,頚動脈2例],四肢13例(18.8%)[この内下肢静脈血栓スクリーニングが10例],その他9例(13%)であった.依頼科別集計としては小児科と腎臓内科が各々9例(13%)と最も多く,肝臓消化器外科8例(11.6%),肝臓消化器内科4例(5.8%),乳腺外科4例(5.8%),整形外科4例(5.8%)など,眼科と呼吸器外科を除くほぼ全ての診療科(合計20診療科)からの依頼があった.入院外来別の集計では,入院49例(71%),外来20例(29%)であった.このうち外来の診療科は肝臓消化器外科3例,救急科,小児科,呼吸器内科,神経内科が各2例,腫瘍血液内科,肝臓消化器内科,循環器内科,血管外科,乳腺外科,小児外科,脳神経外科,形成外科,皮膚科が各1例であった.なおポータブル超音波検査の検査時間は5-12分(平均約8分程度)であった.
【考察】
今回の集計はIVRを除いた緊急検査であったため中心静脈穿刺のための超音波検査は集計されていない.また救急科など診療科が独自の装置を用いて行っている検査は除外されている.今回ポータブル超音波装置が必要なケースは大きく次の3つに分けられた.1)患者さんが安静を保つ必要性がある場合:整形外科や産婦人科などで下肢静脈血栓の検査をベット上安静が必要な患者に対して,緊急に行う必要が病棟で生じた場合が10例と多かった.2)通常のカートベースの超音波装置を外部から持ち込んで検査をするのに時間がかかる場合:小児科領域で新生児・小児の腹部超音波については主治医から依頼を受け,PICUやNICU,小児科外来点滴室などへ出向いて緊急検査を迅速に施行する場合に手持ちで移動が可能なポータブル超音波装置は,依頼されてから検査開始までの時間短縮に有用であった.さらに精神科の閉鎖病棟へ超音波装置を持ち込んで検査を行う場合は,病棟の構造上ポータブル装置が有用であった.3)外来や病棟ベットサイドの限られたスペースで超音波を行いたい場合:近年当院では,皮膚科や形成外科からの超音波診断センターでの通常検査依頼が増加しており,患者さんの事情により迅速に外来診察室にて検査を施行する必要性が生じた場合,限られたスペースで検査が可能なポータブル超音波検査が有効な場合があった.また入院患者が個室ではない場合に短時間で検査が可能な甲状腺などではベットサイドにポータブル装置を持ち込んで検査を施行した方が,より短時間で検査を終了することが可能であった.
【結語】
ポータブル超音波装置は移動制限や安静が必要な患者に対して,迅速に検査を開始することが可能となり,かつ検査スペースによる制限を減らすことも可能となった.また各診療科の主治医の専門外領域の超音波検査に対して最も効果的なタイミングで検査を行うことにより,超音波専門医の臨床的価値を高めるのに有用であると考えられた.