Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
パネルディスカッション4 携帯超音波検査による診療体系の変化−診療報酬も含めて−

(S144)

携帯超音波装置は集中治療病棟で弁膜症診断に有用である.-聴診所見との比較-

Utility of Hand-held Echocardiography in The Diagnosis of Valvular Heart Disease in Intensive Care Unit

日高 貴之, 對馬 浩, 三上 慎祐, 内村 祐子, 藤村 憲崇, 出井 尚美, 宇都宮 裕人, 西岡 健司, 中野 由紀子, 木原 康樹

Takayuki HIDAKA, Hiroshi TSUSHIMA, Shinsuke MIKAMI, Yuko UCHIMURA, Noritaka FUJIMURA, Naomi IDEI, Hiroto UTSUNOMIYA, Kenji NISHIOKA, Yukiko NAKANO, Yasuki KIHARA

広島大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学

Department of cardiovascular medicne, Hiroshima University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
集中治療病棟では,治療機器や周囲の騒音のため,心音,心雑音の聴診が困難な場合がある.携帯超音波装置は,その取扱の容易さ,カラードップラー法による観察が可能であることから,弁膜症診断において聴診器と同等の役割を担うことが期待される.
【目的】
集中治療病棟入院中の患者を対象として携帯超音波装置の弁膜症診断における有用性を検討すること.
【方法】
対象は,2011年11月8日から同年11月22日の間に,当院集中治療病棟に入院した19名.聴診と携帯超音波装置(Vscan, GE Healthcare)を施行し大動脈弁狭窄症 (AS),大動脈弁閉鎖不全症 (AR),僧帽弁狭窄症 (MS),僧帽弁閉鎖不全症 (MR)の有無を評価した.携帯超音波装置による弁膜症の診断は,逆流性疾患においてはカラードプラー法にて逆流シグナルの到達距離,狭窄性疾患はBモード画像での弁性状評価を用いて行い,中等度以上の重症度を有するものとした.弁膜症の確定診断は,Philips Electronics社製CX50を用いて行い,中等度以上の重症度を有するものとした.
【結果】
19例中4例に対象とした弁膜症を6疾患認めた (AS 2例,AR 2例,MR 1例,MS 1例).弁膜症の重症度はいずれも中等度であった.19例中5例で心雑音を聴取し (収縮期雑音5例,拡張期雑音0例),3例で聴診が困難であった.Vscanによる画像取得は,19例中18例において可能であったが,皮下気腫を伴った1例において不可能であった.患者毎の弁膜症の有無に対する感度・特異度は聴診で75%,83%,Vscanでの感度,特異度は100%,93%であった.Vscanの弁膜症毎での感度,特異度,正診率は83%,95%,95%であった.Vscanでは軽度AS1例,軽度MR2例の重症度を過大評価し,中等度MS1例の重症度を過小評価した.
【考察】
Vscanによる画像取得は,聴診が不可能であった症例を含め,多くの症例で可能であった.弁膜症診断においては,聴取した心雑音は収縮期雑音のみで,拡張期雑音は聴取できなかった.本研究では,ARの2例がVscanで診断されており,ARの検出に有用と考えられた.一方,狭窄性弁膜症の診断はBモード画像での性状評価のみによって行なわれたため,診断が困難であった症例を経験した.本研究では,重症弁膜症が含まれておらず,今後これらの症例を含んだ検討が必要である.
【結語】
Vscanによる弁膜症診断は,聴診の代用となり得るが,重症度診断においては検討を続ける必要がある.