Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

特別企画 領域横断
シンポジウム6 組織弾性評価の手法と用語の標準化に向けて

(S141)

Strainography(Real-time tissue elastography®)とカプラを用いた弾性半定量法の検討

Semi-quantification of Elasticity using Strainography (Real-time Tissue Elastography®)with Coupler

貴田岡 正史, 三谷 康二

Masafumi KITAOKA, Kouji MITANI

公立昭和病院内分泌・代謝内科

Division of Endocrinology and Metabolism, Showa General Hospital

キーワード :

【背景】
超音波による組織弾性評価法の1つのStrainographyであるReal-time tissue elastography®(以下RTE)は用手法で圧迫を加え,生じるひずみの程度を画像化するものである.設定したROI(region of interest)内のひずみの程度を相対値として実時間でカラー画像化可能であり,表在臓器を中心に腫瘍の良悪性の鑑別等に有用であるとの報告が多い.しかし,現在臨床的に多用されているRTEはあくまでひずみの相対評価である.脂肪組織や筋肉を比較対象としてひずみの比を示すStrain Ratioを測定することも可能であるが,変形入力を定量化できないため弾性係数を定量的に検討することは困難である.
【目的】
甲状腺領域で,RTEを用いて組織弾性を半定量的に測定ため弾性係数が既知である音響カプラをプローブと生体の間に介在させることにより,カプラを比較対象とする方法を検討した.
【方法】
弾性の標準となる素材を音響カプラとしてプローブと皮膚の間に挟んでプローブによる圧迫を加え,RTEの画像を得た.測定は静止画像で行い,目的とする組織とカプラに,ひずみの程度を求めるためのROIをそれぞれに設定した.両ROI内でひずみ値の平均値が表示され,その比(Strain Ratio)を目的組織の弾性の半定量値とした.カプラの弾性係数は既知であるので目的組織の弾性係数を類推することが可能となる.
【結果】
組織の弾性特性が非線形性を持っているため,小さい初期圧で変形させることが重要であった.実際には,用手法を持ち手圧迫していることによりどの程度初期圧を加えているかが不明であるため,正常組織部分やカプラの画像上の色の状態をみて撮像する必要があった.カプラのROIをその全体に設定するか,下半分に設定するかでそのひずみみの程度は有意に異なった(n=43,0.16% vs 0.18%,p<0.001).これは音響カプラがアタッチメントによりプローブに固定されているため,カプラ内のひずみの分布に不均一性が生じるためと考えられた.また比を求める際に分母となるカプラのひずみみが小さいと,同一疾患においてもその値に大きなばらつきが見られた.画像描出のための圧迫ストロークによる加圧で,圧が十分に加わっていない部分(Bモードが撮像できていない部分や音響カプラが生体から浮いてしまっていることがわかる部分)は除外するか,小さい初期圧でしかも十分なひずみを生じさせての測定であれば精度の高い値が得られた(Basedow病の例では,カプラのひずみが0.10%未満:31.7±26.4,0.10%以上:3.2±1.7).Strain RatioのROIは,生体側は,計測対象いっぱいにROIを置き,カプラ側は,横幅は生体側のROIの幅に合わせ,縦幅はカプラの高さいっぱいに長方形でおくことと,計測対象は可能な限り中央で撮像するようにすることが再現性の良い結果を得るために必要であった.
【考察】
本検査を行う際,精度を担保するためにはいくつか注意すべき点がある.これはひずみを用手法で発生させそれを画像化して評価している手法としての限界をして示しているとも考えられるが,条件を満たした計測を行えば臨床的に有用な情報が得られ,従来のRTEよりも信頼性の高い検査ツールとなる可能性が示唆された.