Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般ポスター
体表:乳腺・甲状腺・表在・その他

(S522)

2D超音波による甲状腺腫重量推定法に関する検討

Estimate Thyroid Weight from Two-Dimensional Ultrasonography

河本 敦夫1, 柿崎 大2, 筒井 英光3, 石井 克也1, 青木 淑子1, 真田 茂4

Atsuo KAWAMOTO1, Dai KAKIZAKI2, Hidemitsu TSUTSUI3, Katsuya ISHII1, Yoshiko AOKI1, Shigeru SANADA4

1東京医科大学病院放射線診断部超音波部門, 2東京医科大学放射線医学教室, 3東京医科大学甲状腺外科, 4金沢大学医薬保健研究域保健学系

1Department of Diagnostic Ultrasound, Tokyo Medical University Hospital, 2Department of Radiology, Tokyo Medical University, 3Department of Thyroid Surgery, Tokyo Medical University, 4Divisionl of Health Sciences, Kanazawa University

キーワード :

【目的】
超音波による甲状腺腫重量推定法には,いくつかの方法が考案・提唱されている[1,2].これらは甲状腺右葉,左葉それぞれの横径,厚さ,長径の積(直方体体積)の和に一定の係数をかける簡便式が用いられている.今回,自施設での摘出甲状腺重量を基準に,各法の相関の程度および誤差を評価した.さらに今後の放射性ヨード内用療法,外科治療時の指標となり得る簡便な甲状腺重量推定法を最小二乗法による回帰式より作成した.
【方法】
2004から2006年の3年間にバセドウ病にて甲状腺亜全摘ないしは準全摘術が施行された142例(男性33例,女性109例,平均年齢34.2才)を対象とした.甲状腺腫の分布は平均値88.7g,範囲は最大740g,最小15gであった.術前に超音波で計測した右葉,左葉それぞれの横径,厚さ,長径の積を各葉直方体体積とし,その和を超音波直方体体積(USHV)とした.次に外科的に摘出された甲状腺腫の重量と残値量を合わせた値を摘出重量(RTV)とした.1)USHVに係数としてπ/6(0.52)と0.7を用いた場合の相関係数,および誤差を求めた.2)回帰式の作成は,USHVとRTVから最小二乗法により求めた.統計学的検定は分散分析を用い,比重は1cm3=1gとした.装置は全例Siemens Elegra,探触子は7.5L40電子リニア型を使用した.撮像法は送信4.5/受信9(MHz)のphase-inversion THIで行った.
【結果】
1)各法の相関は,係数π/6でr=0.9307,0.7でr=0.9758であった.平均誤差はπ/6で-14.1±34.9g,0.7で+15.8±21.9gであった.いずれも強い相関を認めたが,両法とも散布図からは,100gを超える甲状腺腫は小さめの値を示した.2)回帰分析からは,傾きの推定値0.732,切片の推定値-13.587が得られた.この回帰式による相関係数はr=0.9759 (P<0.001),平均誤差は-0.56±21.2gであった.さらに誤差を小さくすべく散布図から導いたUSHV <200gと>200gで分け,それぞれ回帰式を求めたところUSHV<200gで傾き0.575,切片2.911,USHV>200gで傾き8.15,切片-41.241が得られた.r=0.9473,平均誤差-0.02±17.9gとなり,平均誤差はかなり抑えることが可能であった.
【結論】
本邦におけるバセドウ病治療の主体は薬物療法であり,外科的治療の対象になるのは薬物療法抵抗性の体積が大きくなったものという特徴がある.本法は従来提唱されてきた方法に比べ誤差は少なく,簡便なびまん性甲状腺腫重量推定法として優れている.
【参考文献】
[1]Trimboli P, Ruggieri M, Fumarola A, et al. A mathematical formula to estimate in vivo thyroid volume. THYROID 18(8); 2008.
[2]横沢保.甲状腺疾患診断アトラス:甲状腺の体積(重量). 25-26.ベクトルコア.東京; 1997.