吉川 尚男¹, 鈴木 真事², 大塚 健紀¹, 土田 貴子², 大崎 司², 山下 裕正³, 内田 真³, 内村 智生³, 尾崎 重之³, 杉 薫¹

Hisao YOSHIKAWA¹, Makoto SUZUKI², Takenori OTUKA¹, Takako TSUCHIDA², Tsukasa OSAKI², Hiromasa YAMASHITA³, Makoto UCHIDA³, Tomoo UCHIMURA³, Shigeyuki OZAKI³, Kaoru SUGI¹

¹東邦大学医療センター大橋病院循環器内科, ²東邦大学医療センター大橋病院臨床生理機能検査部, ³東邦大学医療センター大橋病院心臓血管外科

¹Division of cardiovascular medicine, Toho University Ohahi Medical Center, ²Division of Clinical Physiolosy, Toho University Ohahi Medical Center, ³Division of Cardiovascular Surgery, Toho University Ohahi Medical Center

キーワード :

【目的】
大動脈弁狭窄症と大動脈弁閉鎖不全症における弁膜症手術による左室収縮能への影響について2D speckle-tracking echocardiography　（2D-STE）を用いて検討すること．
【方法】
対象は大動脈弁狭窄症（AS）の患者20例と大動脈弁閉鎖不全症（AR）の患者20例である．左室収縮能の評価は通常の心エコー法と2D-STEを用いて手術前後で比較評価した．radial, circumferential, longitudinal 方向それぞれに対してpeak strainとtime to peak strain の平均値を測定した．2D-STEによって得られるpeak strainをそれぞれPRS: peak radial strain, PCS: peak circumferential strain, PLS: peak longitudinal strainとして計測した．また，time to peak strainをそれぞれT-PRS: time to PRS, T-PCS: time to PCS, T-PLS: time to PLSとして計測した．
【結果】
手術の前後で左室駆出率は両群ともに明らかな変化は認めなかった．AR群では手術後にT-PRS, T-PCS, T-PLSが有意に短縮し PCS, PLSも有意な減少を認めた．AS群ではT-PRS, T-PCS, T-PLSは有意に短縮を認めたがRS, PCS, PLSは有意な変化を示さなかった．
【結語】
両群ともにtime to peak strainは短縮したがpeak strainは圧負荷が病態の主である大動脈弁狭窄症では変化を示さなかった．弁膜症手術が及ぼす左室収縮能への影響は圧負荷と容量負荷とで異なると考えられた．左室駆出率では検出できない手術による左室収縮能の変化の検出に2D speckle tracking echocardiographyが有用であった．