Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

一般口演
産婦人科:婦人科

(S437)

分娩3ヵ月後に出血性ショックを来たした子宮仮性動脈瘤の一例

A rare case of uterine artery pseudoaneurysm three months after cesarean delivery

早田 英二郎, 松田 秀雄, 古谷 健一

Eijiro HAYATA, Hideo MATSUDA, Kenichi FURUYA

防衛医科大学校産科婦人科学講座

Department of Obstetrics and Gynecology, National Defense Medical College

キーワード :

分娩後の遅発性子宮出血の原因として子宮仮性動脈瘤の症例はまれながら散見されているが,時として大出血を来すことがあり,注意すべき鑑別疾患の一つである.今回我々は,帝王切開後3ヶ月で過多月経にて救急搬送され,経膣超音波および3次元CTにて子宮仮性動脈瘤と診断し,子宮動脈塞栓術によって治療し子宮温存できた例を経験したので報告する.症例は24歳1経妊1経産.妊娠39週に分娩停止の適応で前医にて緊急帝王切開術を施行された.このとき子宮下部切開創左断端より動脈性の出血があり,これを絹糸にて2重結紮したとのことであった.術後経過は著変なく経過し,産後45日目に月経発来した.産後65日目に多量に持続する性器出血があり,ショック状態で前医入院,輸血治療を施行された.5日間で止血し低容量ピル処方され経過観察されていたが,産後89日目より再度大量の性器出血があり,当院へ救急搬送された.来院時意識清明,膣内に凝血塊350gを認めた.経膣超音波上子宮は正常大(57.3mm),内膜は肥厚しておらず(5.4mm)子宮内に貯留像を認めなかった.子宮頚部左側に径4cmの空洞を持つ腫瘤像を認め,カラードプラーでは内部に渦巻状の血流像(turbulent arterial flow)を認めた.3次元CTにて左子宮動脈に発生した仮性動脈瘤と診断した.放射線科にて子宮動脈塞栓術施行され,翌日から性器出血は著明に減少し,3日後には完全にみられなくなった.現在外来にて経過観察中である.子宮仮性動脈瘤は,手術操作の際に血管損傷を来して生じた医原性変化であるという報告が多く,その中でも帝王切開が原因であったという報告が多い.ただ,術後3ヶ月後に大量出血を来す例や,しかもそれが月経周期に一致したという例は報告されておらず,今回診断に難渋した点である.月経前後の子宮血流変化,子宮内膜の脱落による仮性動脈瘤周囲の血管露出などが原因かと考えられる.本症例は子宮動脈塞栓術により再出血もなく経過良好であったが,今後同様の症例の蓄積が待たれる.