井上 勝次¹, 岡山 英樹¹, 西村 和久¹, 齋藤 実², 日浅 豪², 住元 巧², 檜垣 實男¹

Katsuji INOUE¹, Hideki OKAYAMA¹, Kazuhisa NISHIMURA¹, Makoto SAITO², Go HIASA², Takumi SUMIMOTO², Jitsuo HIGAKI¹

¹愛媛大学医学部附属病院脳卒中・循環器病センター循環器科, ²喜多医師会病院循環器内科

¹Department of Cardiology, Ehime University Cardiovascular Center, ²Department of Cardiology, Kitaishikai Hospital

キーワード :

【背景】
これまでejection fraction （EF） やwall motion scoreが左室収縮能の指標として用いられているが, 近年speckle tracking strainを用いて評価したglobal longitudinal strainが心血管イベントを予測する新しい有用な左室収縮能指標と報告されている．我々はspeckle tracking strainを用いた検討で右室中隔ペーシングは右室心尖部ペーシングに比し左室dyssynchronyを軽減することを報告した．
【目的】
今回我々は右室心尖部ペーシング （RVA） および右室中隔ペーシング （RVS） 時の左室global strainを評価し右室ペーシングの左室収縮能に及ぼす影響ついて検討した．
【対象】
対象は症候性徐脈性疾患 （洞不全症候群, 房室ブロック） に対して恒久式ペースメーカー植え込み術を行った連続90例である （RVA 46例, RVS 44例）．除外項目は虚血性心疾患例，有意な心臓弁膜症例，左室収縮能低下例とした．本研究では年齢, 性をマッチさせたコントロール群 （C） 30例を含めて検討した．
【方法】
超音波心エコー装置はGE社製Vivid 7 Dimensionを用い, 恒久式ペースメーカー植え込み術から一週間以内に超音波心エコー検査を行った．Speckle tracking strain解析はEcho Pac PC softwareを用いて評価した．本研究で算出した左室strain指標は, （1） Longitudinal dyssynchrony index, （2） Global longitudinal strain （GLS）, （3） Global circumferential strain （GCS）, （4） Global radial strain （GRS） とした．
【結果】
右室ペーシング時のQRS幅はRVA群がRVS群に比し有意な延長を認めた （161±16 ms vs 141±16 ms, P＜ 0.001）．Longitudinal dyssynchrony indexはRVA群がRVS群, C群に比し有意に高値であった （RVA: 84±16 ms, RVS: 51±13 ms, P＜ 0.001 vs RVA, C: 48±11ms, P＜ 0.001 vs RVA）．EF, GCS, GRSは三群間で有意差は認められなかったが （EF: RVA: 65±5％, RVS: 68±6％, C: 68±5％; GCS: RVA: -19±4％, RVS: -20±3％, C: -22±5％; GRS: RVA: 49±17％, RVS: 50±24％, C: 61±15％, P＞ 0.05 for all）, GLSはRVA群でRVS群, C群に比し有意に高値であった （RVA: -14±3％, RVS: -16±2％, P＜ 0.05 vs RVA, C: -18±3％, P＜ 0.001 vs RVA）．
【結論】
右室心尖部ペーシング症例は左室dyssynchronyが強く, GLSの絶対値が低値であった．右室中隔ペーシングは右室心尖部ペーシングに比し右室ペーシングに伴う左室dyssynchronyのみならず収縮能悪化を軽減させる可能性が示唆された．