吉牟田 剛¹, 岡島 年也¹, 久保田 義則², 塘 義明¹, 野々木 宏¹

Tsuyoshi YOSHIMUTA¹, Toshiya OKAJIMA¹, Yoshinori KUBOTA², Yoshiaki TSUTSUMI¹, Hirsohi NONOGI¹

¹国立循環器病センター心臓血管内科, ²国立循環器病センター生理機能検査部

¹Department of Medicine （Cardiology）, National Cardiovascular Center, ²the Laboratory of Clinical Physiology, National Cardiovascular Center

キーワード :

末梢動脈疾患（peripheral arterial disease: PAD）の診断および治療方針を決定する際に画像診断の果たす役割は大きい．2007年に発表されたPADの診断治療指針であるTASC-II（Trans-Atlantic Inter-Society Consensus-II）では，病変部位，狭窄の程度，閉塞長，病変部の組織性状（石灰化病変の有無と程度）を考慮した治療方針を推奨している．超音波検査法は，無侵襲検査であり，血管の狭窄や閉塞等の解剖学的情報に加え，狭窄部を通過する血流速度などの血行動態的情報と，さらに病変部のプラークの組織性状情報を得ることができるため，PADの診断に汎用されている．1）Bモード断層法・カラードプラ法：Bモード断層法で血管径，狭窄，閉塞部位などを同定した後，カラードプラ法を併用する．カラードプラ法は，狭窄部位の評価のカラー表示によって血流の方向と流速を評価することが可能である．高度狭窄部はモザイク様のカラーで表示される．2）パルスドプラ法：超音波検査法の中で，最も効率よく動脈の狭窄や閉塞を間接的に推定できる．角度補正したサンプリングボリュームを総大腿動脈，膝窩動脈，足背動脈，後脛骨動脈部位におき，血流波形を表示する．これらの部位で血流波形に異常がなければ，それよりも中枢部位に血行再建術を施行するような有意な狭窄や閉塞性病変が無いことを意味する．一般に正常の血流波形は逆成分を伴う3相波で，acceleration timeが120msec以下である．50％以上の狭窄部の末梢の血流波形では，徐々にPeak systolic velocity（PSV）が低下し，acceleration timeも延長した波形となる．3） 連続波ドプラ法：連続波ドプラ法では狭窄の程度をピーク流速度から評価する方法である．前述のカラードプラ法でモザイク様カラーを呈した部位に連続波ドプラを設定することで，ピーク血流速度を計測する．PSVが2.0m/sを超えると有意な狭窄とし，治療方針の検討が必要となる．4）血流通過時間（Transit Time of Vessel flow: TVF）：モニター心電図のR波頂点からドプラ波形の頂点までに要する時間がPAD疾患の有無で異なることを利用した診断方法．本ワークショップでは，TASC-IIおよびACC/AHA治療方針に基づいた超音波検査法の使い方について自験例も含めて述べたいと思う．