石川 卓哉¹, 廣岡 芳樹², 伊藤 彰浩¹, 川嶋 啓揮¹, 大野 栄三郎¹, 松原 浩¹, 伊藤 裕也¹, 中村 陽介¹, 後藤 秀実^{1, 2}

Takuya ISHIKAWA¹, Yoshiki HIROOKA², Akihiro ITOH¹, Hiroki KAWASHIMA¹, Eizaburo OHNO¹, Hiroshi MATSUBARA¹, Yuya ITOH¹, Yosuke NAKAMURA¹, Hidemi GOTO^{1, 2}

¹名古屋大学医学部附属病院消化器内科学, ²名古屋大学医学部付属病院光学医療診療部

¹Department of Gastroenterology, Nagoya University Graduate School of Medicine, ²Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【目的】
膵内分泌腫瘍 （PET） 悪性度診断におけるEUSおよび造影EUSの有用性について検討すること．
【方法】
2001年以降，当院でEUSを施行し，病理組織学的診断 （外科的切除40例，EUS-FNA 1例） の得られたPET 41例62病変を対象とし，悪性例に特徴的な画像所見を検討した．良悪性診断はWHO分類2004に基づいて行った．内訳は，［Well-differentiated endocrine tumor, ’Benign’ behaviour］ 39病変，［Well-differentiated endocrine tumor, Uncertain behaviour］ 11病変，［Well-differentiated endocrine carcinoma］ 10病変，［Poorly-differentiated endocrine carcinoma］ 2病変であり，［Uncertain behaviour］ 以上を悪性例として検討を行った．造影EUSを実施した41病変では造影パターンを，均一な造影効果あり （A），内部に造影欠損域あり （B），造影効果に乏しい （C），の3パターンに分類し，良悪性の特徴を検討した．使用機器はGF-UE 260 （OLYMPUS Co., Ltd., Tokyo, Japan） とprosound α10 （ALOKA Co., Ltd., Tokyo, Japan），またはEG-3630UR/EG-3670URK （PENTAX Co., Ltd., Tokyo, Japan） とEUB-8500/Hi Vision 900 （Hitachi Co., Ltd., Tokyo） の2つの電子ラジアル型EUSと観測装置の組み合わせを用いて5-10MHzの周波数で観察を行った．造影EUSにおける撮影状況は以下のとおりである：周波数；7.5 MHz，color Doppler mode （最小検出速度4.5 cm/s）．なお，本検討は当院IRBの承認を得て行われた．
【結果】
EUSのB-mode画像所見における単変量ロジスティック回帰分析では，腫瘍径が大きい，内部構造不均一，無エコー領域 （嚢胞性変化） が悪性診断に寄与する因子となり，多変量解析では内部構造不均一が最も悪性診断に寄与する因子となった （P ＜ 0.0001，OR ＝ 53.33，95％CI ＝ 10.79-259.60）．造影EUSでは，41病変中40病変 （97.6％） が強い造影効果を示し，パターン別では，良性20病変中A 18例 （90％），B 2例 （10％） で，悪性21病変中A 2例 （9.5％），B 18例 （85.7％），C 1例 （4.8％） であった．通常観察における内部不均一な低エコー領域と無エコー領域の多くは病理組織標本では腫瘍内出血もしくは壊死部分に相当していた．これらは造影EUSでは欠損域として通常観察より明瞭に描出された．通常観察で「内部構造不均一」を悪性とした感度，特異度，正診率は90.5％，85.0％，87.8％，造影パターンB or Cを悪性とした感度，特異度，正診率は，90.5％，90.0％，90.2％であった．
【結語】
悪性PETにおけるB-mode画像所見および造影EUS所見が明らかになり，両者を組み合わせることで診断精度が向上する．