Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション13
ソノグラファーのレポート: どこまで診断しどこまで書くべきか

(S246)

ソノグラファーのレポート:どのように診断しどのように書くべきか

Repot of Sonographa:How should diagnose and how write?

大山 葉子1, 石田 秀明3, 吉田 千穂子1, 紺野 純子1, 高橋 律子1, 星野 孝男2, 長沼 裕子4, 渡部 多佳子3

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA3, Chioko YOSHIDA1, Jyunko KONNO1, Rithuko TAKAHASHI1, Takao HOSHINO2, Hiroko NAGANUMA4, Takako WATANABE3

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田組合総合病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4横手市立病院内科

1Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 2Department of Gastroenterology, Akita Kumiai General Hospital, 3Centar of Diagnosis Ultrasound, Akita Red Ccross Hspital, 4Department of internal medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

【はじめに】
現在超音波検査の現場で,検査を施行し所見を記入する多くの部分をソノグラファーが行っている.しかしその際求められるレポートの書き方に関しては明格な基準がない状態である.今回のシンポジウムのテーマである“どこまで診断しどこまで書くべきか”について,自分のレポートの書き方の変遷を診断能力との対比において見つめ直してみた.更に県内の代表的7病院のレポートに関しその書き方と問題点を比較検討した.
Ⅰ.自分のレポートの書き方は3期に大別可能であった.1,教科書を手本に同じ所見が見られた場合,躊躇なく断定的診断をした時期.2,経験を増し診断の怖さを覚え,鑑別診断を多数列挙した時期.3,的確な指導医からレポートの書き方を学び,所見や診断の書き方が整理可能となった時期,である.具体的には第1期は,知識不足で選択肢が少なく,“教科書の知識を覚えるのみで十二分である.”と妄信していた時期であり,そのレポートの書き方は一見自信に満ちていた.この第1期の自信は,多彩な疾患に遭遇する事により粉砕され完全に喪失した.診断する時の怖さのみが前面にでて思いつく診断名を列挙するか,診断抜きで所見のみを並べ逃げの診断をしていた時期が第2期である.勉強会に積極的に参加し疑問解決のためもがいているが解決せず,情熱が空回りした時期でもあった.次に自分が最も知りたい事を,自分の思考方法を理解した上で的確に教示してくれる指導医との出会いにより,筋道を立てた考えと自然な診断の流れが身についたのが第3期である.この様に個人史を振り返ると自分の努力で1期から2期へは進む事は可能であるが,2期から3期に進むためには良い指導医との出会いが不可欠であり,自分の努力だけでは解決し得ない問題ではある.本シンポジウムの“どこまで診断すべきか”という基準は,本質的には書く側の実力により決まる部分が大きい,と思われる.
Ⅱ.県内7病院のレポートの書き方は4群に大別可能であった.1.ソノグラファーは,ドックは行うが臨床には全くタッチしない施設(1施設).2.ソノグラファーは,簡単な検査のみ施行し難しい検査は医師が行う施設(2施設).3.ソノグラファーは,所見のみを記入し診断は全て医師が行う施設(3施設).4.ソノグラファーが,全ての検査を行い診断名も記入している施設(1施設),であった.しかし,これら施設のソノグラファーの意見を総合すると,群別決定因子はソノグラファー側の技術や要求ではなく,むしろ医師側や施設の都合により決定していた.つまり,“どこまで書くか”という問題には医師や施設といった外因的因子も関与してくると思われる.当院はこの第4群に当たるものの,はじめは1期,2期の状態であったが,自身の努力に加え,良い指導医に巡り合い,医師に信頼されるようになり変動したのである.(現在も医師の診断サインはもらっており,これは医師との信頼関係を長期間保つのに必要と考えるからでもある.)この様にレポートを“どこまで診断しどこまで書くべきか”という問題は,見方を変えると,”どこまで信頼されどこまで求められているか?”という言葉に置き換えることが出来る.これはソノグラファーの努力という内的因子と,良い指導医との出会い,施設や医師の考えという外的因子,の3要因によって決定する.ソノグラファーは努力を怠るとすぐに臨床の信頼を失う可能性があり,これらを打開するには,よい指導医を見つけ勉強し続ける必要がある.実際の発表では,具体的なリポートとそれに対する周囲の反応等の実際例を供覧しソノグラファーの将来像についても論じたい.