Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2010 - Vol.37

Vol.37 No.Supplement

パネルディスカッション
パネルディスカッション10
循環器領域の若手医師・検査技師をどのように育成するか

(S233)

若手医師教育の問題点

How to educate young doctors

中谷 敏

Satoshi NAKATANI

大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻・機能診断科学

Department of Health Sciences, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

最近,心エコー関連の学会等で感じることは,若手医師の積極的な発言が少ない,ということである.このことは心エコーだけの現象ではないかも知れないが,次世代を担うべき人材が少ないように思う.なぜであろうか.1. 心エコーの臨床的有用性を忘れていないか.CTやMRIなど昨今の画像診断の進歩はめざましい.しかしそれらが心エコーにとって代わることは当分ないであろう.臨床における心エコーの有用性は明らかである.特に患者の状態を瞬時瞬時に判断していかなければならない救急現場やベッドサイドでは重要である.それにもかかわらず,若手医師が心エコーを意のままに使いこなしているとは言い難い.ひょっとして彼らは心エコーは自分で行うものではなく検査技師が行うものであると考えているのではないか.しかし心エコーのみでなく種々の検査を使いこなし,診断をつけ,治療を行い,経過観察をして,その結果をさらなる治療にフィードバックするという一連の過程をトータルに把握できるのは医師である.そこにおいて心エコーを使いこなせるメリットは計り知れない.心エコーは検者次第で得られる情報の質と量が格段に違う検査である.そのためにも各人が正しい技術を習得しなければならない.指導者は労を惜しんではいけない.いかに的確に記録される心エコーが重要な情報を提供し,それによっていかに患者治療が変化しうるのかということを身をもって示さなければならない.2. 研究ツールとしての心エコーの重要性を見過ごしていないか.心臓の動態をリアルタイムに非侵襲的に見ることのできる画像診断は心エコーをおいて他にはない.したがって心エコーは臨床に役立つのみならず,いろいろな研究に適したツールでもある.種々の介入を行った小動物の心血行動態評価への応用がどんどん行われている.基礎研究をしなければアカデミックポジションを獲得しにくいという風潮はないではないが,研究者を目指す若手医師にも心エコーは是非習得しておいてもらいたい.臨床であろうと,基礎研究であろうと医療は結局は患者にフィードバックされるべきものなのだから.3. PCI,アブレーションは面白い.しかしそれだけでよいか.PCIやアブレーションで疾患を完治したときの喜びは大きい.夢中になってしまうこともよくわかる.しかし侵襲的手法を行う前に,きっちり診断をつけることはもっと重要であろう.それにもかかわらず,患者をトータルに診るという視点が欠けている医師は多くないか.入院してインターベンションを受けたが,その間一度も医師に聴診器を当てられなかったという笑えない話もある.まずは何が本質かを知るべきである.4. 問題点を解決するために.若手医師の中には心エコーは難しい,オーダーすれば技師がやってくれる,学ぼうとしてもその機会がない,というものがいる.指導者はまずは院内で若手医師が心エコーに触れて,学べる場を作らなければならない.そして心エコーの臨床的価値に気づかせ,さらに心エコーを用いた研究を行わせるべきである.研究で得た成果はどんどん学会に発表させ,論文にまとめさせなければならない.論文にまとめることでどれだけ病態の理解が深まるか,また個々の断片的知識を一般化するのにどれだけ役立つかということを実感させなければならない.そのためには指導者自身が常にリサーチマインドを持って臨床に臨み指導していくことが重要である.