Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般ポスター
消化器:消化管

(S485)

急性腸炎が原因と考えられた門脈ガス血症の2例

Two cases of hepatic portal venous gas caused by acute enteritis

藪中 幸一

Koichi YABUNAKA

医療法人大植会葛城病院放射線科

Depertment of Radiology, Katsuragi Hospital

キーワード :

【はじめに】
門脈ガス血症は,一般的に腸管壊死などの疾患に伴うことが多く,予後不良の兆候とされている.しかし,近年では保存的に軽快した症例も報告されている1,2).今回,われわれは急性腸炎が原因と考えられる門脈ガス血症を認め,保存的に治療しえた2例を経験したので報告する.
【症例1】
30歳,男性.平成20年3月18日の明朝より上腹部痛を認めたため当院を受診した.腹部USでは門脈本幹から左右の門脈枝内に大量のガス像を認めた.大腸は回盲部から上行結腸にかけて軽度な浮腫とその肥厚した壁内にもガス像を認めた.しかしながら,腸管壊死や腹水はみられず,血液検査所見がCRP 0.61 mg/dl, WBC 4.900 /μl,と正常であった.CTでは門脈内ガスを確認できず.入院にて経過観察としたが,第2病日のUSでは門脈内ガスは完全に消失し大腸浮腫も軽減していた.
【症例2】
90歳,男性.既往歴:肺癌にて治療中.平成20年4月7日に吐気と嘔吐により当院を受診した.USでは門脈本幹から左右の門脈枝内に大量のガス像を認め,大腸は上行結腸に軽度な浮腫を認めたが,腸管壊死や腹水はみられなかった.CTでは門脈内ガスを認めた.血液検査では,WBC 12,000 /μl, CRP 7.1mg/dlと炎症所見を認め,急性腸炎による門脈ガス血症を疑った.第2病日のUSでは門脈内ガスは完全に消失しており,大腸浮腫も軽減していた.
【考察】
門脈ガス血症についてLiebman 3) らは,発生要因として粘膜損傷,腸管内圧上昇,敗血症の3つを指摘しており,予後不良の兆候とされている.しかし,US画像診断装置の進歩により, CTでは描出し得ない門脈内ガスでもUSでは描出可能であった.門脈ガス血症は,予後の上で腸管虚血を伴うものと伴わないものに分類できる4). 前者は緊急性を要する重篤な状態であるが,後者は病態に即した治療が可能である.後者における門脈ガスの発生機序としては腸管粘膜の損傷,腸管内圧の上昇,ガス産生菌の血中移行等が考えられ,本症例でもこれらの関与が推測された1,2).本症の診断では門脈内ガスと共にその原因と考えられる大腸浮腫も観察することができ,USが極めて有用であった.
【参考文献】
 1)梶谷展生ほか. 保存的に治療しえた門脈ガス血症の2例. 日本内科学会雑誌. 93: 2633- 2635. 2004.
 2)水野泰行ほか. 保存的治療で軽快した門脈ガス血症の4例. 日本臨床救急医学会雑誌5: 442-446. 2002.
 3)Liebman PR, at al. Hepatic--portal venous gas in adults: etiology, pathophysiology and clinical significance. Ann Surg. 187: 281- 287, 1978.
 4)Niki M, et al. Hepatic portal venous gas disappearing within 24 hours. Internal medicine. 22: 214- 218, 2002.