Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2009 - Vol.36

Vol.36 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘍造影2

(S371)

癌患者の術前造影超音波検査

Role of Contrast-enhanced US in Cancer Patients

大山 葉子1, 石田 秀明3, 吉田 千穂子1, 紺野 純子1, 工藤 奈緒子1, 星野 孝男2, 渡部 博之2, 小松田 智也3, 渡部 多佳子3, 長沼 裕子4

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA3, Chioko YOSHIDA1, Jyunko KONNO1, Naoko Kudo1, Takao HOSHINO2, Hiroyuki WATANABE2, Tomoya KOMATSUDA3, Takako WATANABE3, Hiroko NAGANUMA4

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田組合総合病院消化器科, 3秋田赤十字病院超音波センター, 4市立横手病院内科

1Medical Laboratory,Akita Kumiai General Hospital, 2Gastroenterology, Akita Kumiai General Hospital, 3Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 4Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital

キーワード :

[はじめに]造影超音波はその優れた肝内小病変検出能から,癌患者における術前検査の肝転移の拾い上げに有用と考えられている.一方,肝転移のほとんどが,造影剤静注後,短時間の濃染とその後の持続的な低染域(造影の抜け)として表現されることから,(現在の超音波検査の過密な状態を考慮し)時間効率を上げるため,あらかじめ病室や外来で造影剤静注後待機し,実質相(クッパーイメージ)における造影の抜けを拾い上げる,という考えも有り得るわけである.今回我々は,このやり方が妥当かどうか,下記の方法で検討し若干の知見を得たので報告する.
[対象と方法]他院で腫瘍(原発巣)が疑われ,術前検査と加療を目的に当院を紹介された1,441例中肝造影超音波検査を施行された310例(21.5%)を対象とした.この多くは初回受診例である.
当初坦癌例に対しては可能な限り造影超音波検査を施行しようとしたが,実際には前述の超音波検査の過密スケジュールのため次の1)−3)の場合にほぼ限定された.Bモードで腹部全体を観察した後,1)肝内に明らかな腫瘤性病変を認めた場合,2)まだら脂肪肝などの腫瘤との鑑別か必要であった場合,3)腫瘍マーカー高値例などである.造影超音波検査の方法は,通常の肝の造影手順であった.
[結果]上記の方法で試行した造影超音波で肝内に限局性病変を認めたものは51例52病変で,そのうち24例(46.2%)は原発巣の肝転移であった.しかし,肝転移でなかったものが28例(53.8%)あり,その内訳は肝血管腫20例(38.4%)肝細胞癌4例(7.7%)肝のう胞3例(5.8%)その他1例(1.9%)であった.肝細胞癌の4例は全例肝硬変を合併していた.
[まとめと考察]今回の検討は,時間的制約のため,癌患者の術前検査として同時期に当院を受診した全例に造影超音波検査は施行できず,方法論としては不完全である.そのため,正確な転移例の頻度は不明である.ただ今回の検討で,癌患者の術前検査といっても実は多様で,肝に限っても,1)慢性肝疾患が潜在し,そこに肝癌が発生する場合,2)肝血管腫やFNHなどの良性腫瘍を伴う場合,3)肝転移,などが想定され,1)の場合その分化度により造影所見も多様である.更に慢性肝疾患例では一般的に肝の実質パターンから多くの情報の取得を得られるが,造影後の超音波ではsonazoid造影剤沈着のため判定がかなり困難となる.またBモードの情報がない場合は,転移巣と肝のう胞の鑑別に苦慮することも考えられる.このように,やはり癌患者の術前検査としては,二度手間にはなるが,まずBモードによる観察と造影超音波検査の二つが必要と思われる.造影超音波検査による肝血管腫の診断能は極めて高く,今回の検討でも癌患者の術前造影超音波検査で20例と効率に認められた.能率よく肝血管腫を転移巣と鑑別出来ることは,癌術前造影超音波検査における大きな意義と考えられる.