日本超音波医学会

地方会抄録号

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社団法人日本超音波医学会第41回北海道地方会学術集会抄録

基礎冠動脈など血管新技術ストレイン症例肝・胆・膵

基礎

座長: 山田 聡(北海道大学循環病態内科学)

1.蛍光物質付着型バブルリポソームを用いたsonoporationの検討

吉松 幸里1, 工藤 信樹1, 鈴木 亮2, 丸山 一雄2

1北海道大学大学院情報科学研究科,2帝京大学薬学部

 我々はパルス超音波と微小気泡を用いたsonoporationに関する検討を行っている.本手法には,微小気泡が接触している部分の細胞膜に損傷が生じるという特徴がある.そのため,微小気泡に薬剤を付着させることができれば,より効率のよいsonoporationが実現できると考えられる.そこで本研究では,薬剤を模擬した蛍光物質を表面に付着させたバブルリポソームを作製し,それを用いて効率向上の可能性に関する検討を行った.
 バブルリポソームは,蛍光ラベル剤NBDを表面に付着させたリポソーム(DSPE:DSPE-PEG(2k)=94:6(モル比))に難溶性ガス(C3H8)を封入することにより作製した.Sonoporation実験には,ガラスボトムディッシュに培養したヒト前立腺がん細胞PC-3を用いた.細胞に気泡が接触した状態で,平面型超音波振動子(中心周波数1MHz,最大負圧0.3MPa)で発生させた波数3波のバースト波を1回のみ照射した.細胞に付着しなかった気泡の残渣を取り除くため,超音波照射後に細胞表面をPBSで洗浄した.
 超音波照射前,作製した気泡を観察すると,気泡の周囲にリング状の蛍光が認められ,気泡に蛍光物質が付着していることが確認された.超音波照射後,微分干渉像では気泡が崩壊し消失していたのに対し,蛍光像では気泡のあった場所に蛍光が残存していることが確認できた.この蛍光はPBS洗浄後も消失しなかったことから,蛍光物質の細胞表面への強い付着もしくは内部への導入が実現できたと考えられ,薬剤を付着させた気泡がパルス超音波照射によるsonoporationの効率向上に有用であることが確認された.

2.細胞培養足場層の材質がソノポレーション効果に与える影響

木下 勇人, 工藤 信樹

北海道大学大学院情報科学研究科

 これまで我々は,ソノポレーションに関する検討を行い,気泡が細胞に接触した条件では短パルス超音波を1度照射するだけで細胞膜の一時的な損傷を起こし得ることを明らかにしてきた.しかし,我々の検討はカバーガラスの上に培養した細胞を対象としており,細胞が置かれた環境は実際の生体内と大きく異なるものと考えられる.そこで本研究では,よりin vivoに近い条件として柔らかいゲル上に培養した細胞を用い,従来法で培養した細胞とソノポレーション効果を比較した.
 足場層としては,市販のコラーゲンゲル培養キット(新田ゼラチン)を用いた.20mm角,厚さ1mmのアクリル板の中央に直径8mmの穴を開け,内部にゲルを満たした状態で両面をカバーガラスで挟み,30分37℃で加温することでゲル化させた.その後カバーガラスを片面のみ剥がし,ゲル上に通常の手順でヒト前立腺がん細胞を培養した.比較対象として,カバーガラス上に直接播種した従来サンプルも作製した.
 倒立顕微鏡のステージ上に置いた水槽の底面に穴を開け,上面に作製した細胞サンプルを,下面に通常のカバーガラスを貼り付けて観察チャンバを構成した.チャンバ内部を5mg/mlのLevovist®懸濁液で満たし,細胞膜の損傷を検出する蛍光色素としてPI (propidium iodide)を加えた.気泡が浮力で上昇し細胞と接触するまで25分程度待ち,中心周波数1MHz,最大負圧1.1 MPaのパルス超音波を1回照射した.パルス波に含まれる波数は3波と10,000波の2種類とした.
 ガラス上に播種した細胞に波数3波のパルス超音波を照射した場合,約10%の細胞に膜損傷が生じた.また,波数10,000波の場合には,細胞の約9割が剥離して視野から消失した.これに対し,ゲル上に細胞を播種したサンプルでは,いずれの波数においても細胞の剥離は認められなかった.また,膜損傷率は波数3波,10,000波でそれぞれ約0%,10%であった.3桁以上波数が多い超音波を加えても細胞が全く剥がれず,膜損傷率がほぼ同じであったことから,足場層の影響検討の重要性が確認された.

3.超音波照射による期外収縮発生のメカニズム検討のための実験手法の確立

水内 美里, 工藤 信樹

北海道大学大学院情報科学研究科

 これまで我々は,ラット培養心筋細胞を用いて超音波照射の影響に関する検討を行い,期外収縮の発生が超音波の照射時相に関する閾値を持つことを報告してきた.しかし,試料毎に拍動周期が異なることが原因で,十分な評価ができなかった.本研究では,電気刺激により細胞の拍動周期を制御することを目的として,電気刺激と超音波照射を同時に実現できる培養容器を作成した.
 これまで培養容器として用いていたOpticell(三洋電機)では,細胞がはがれやすく,電気刺激時に生じる気泡が細胞を圧迫することから,長時間拍動が持続できないという問題があった.これらを解消するため,本研究では培養容器としてμ-Slide Ⅵ flow through(ib80606,日本ジェネティクス)を用いた.これは厚さ0.4mm,幅3.8mmの薄いチャネルをスライドガラス大のプラスチック板内部に設けたもので,チャネル両端には培養液を潅流するためのパイプが設けられている.超音波の発生には,中心周波数1MHzの集束型振動子を用い,最大負圧1.3MPa,波数3波のパルス超音波を発生させた.電気刺激用の電極は両端のパイプ内に配置し,電圧5V,繰り返し周波数1Hz,Duty比3%の矩形波電圧を印加した.
 開発した培養容器の有用性を確認するための基礎実験として,ラット新生仔から単離した心筋細胞を培養し,チャネル内全体に細胞が播種できること,拍動を開始しても細胞がはがれないことを確認した.次に,個別の周期で自律拍動をしている細胞に電気刺激を行い,拍動を同期できることを確認した.刺激を30分以上持続しても,拍動周期に大きな変化は見られなかった.さらに,拍動を同期させた状態で細胞に超音波を照射し,期外収縮が誘導できることを確認した.しかし,培養容器による超音波減衰のため,期外収縮の発生割合は約60%であった.今後,期外収縮がほぼ100%誘導できるよう改善し,期外収縮発生の時間閾値に関する検討を行っていく.

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冠動脈など

座長: 湯田 聡(札幌医科大学臨床検査医学)

4.当院にて経験しえた心室中隔穿孔と心破裂の1例

西尾 直美1, 八木橋 繭美1, 佐々木 景子1, 橋本 彩1, 藤井 明2, 宮木 靖子2

1函館五稜郭病院検査科生理検査室,2函館五稜郭病院心臓血管外科

【症例】74歳 女性
【既往歴】高血圧
【現病歴】高血圧で他院通院,血圧130/70mmHg程度で経過していた.平成23年5月12日胸苦(本人は胃痛と思う)あり,徐々に倦怠感及び食欲低下を自覚する.5月17日夜間に突然の胃痛と嘔吐で当院に搬送.搬入時血圧70mmHg代,CT上心のう液貯留を認めたため即日入院となる.
【入院時現症】身体所見:身長146cm,体重47kg,血圧84/62mmHg,脈拍111回/分,体温35.3℃,呼吸数30回/分
【検査所見】血液検査:WBC 6,300/μl,AST/ALT 179/105IU/l,CPK 273IU/l,H-FABP定性(+),心筋トロポニンi 23.2ng/ml
心電図検査:V1-4QSパターン,ST低下 胸部X-P:CTR 62.5%,肺うっ血なし心エコー図検査:左室前壁中隔,前壁,心尖部全周の広範囲な無収縮と心室中隔中央部に裂開が観察され,その部に左室から右室への短絡血流を認めた.欠損部は約6.5mm,短絡血流速度5.02m/s,PG101mmHg.右室拡大や壁運動低下は認めなかったが右室前方にecho free spaceを認めその内部には高輝度の帯状エコーが認められた.心臓カテーテル検査:冠動脈造影で#6が100%閉塞,#9-1が90%,#4PDが95%狭窄,LVGでLV→RVflowを確認,QP/QS1.4,L→Rshunt率29%だった.
【経過】5月18日全収縮期雑音聴取とともに心エコー図検査でVSR検出.5月19日心室中隔欠損閉鎖術(Komeda-David術)施行と心破裂に対し同閉鎖術及び形成術施行.術中所見では暗赤色血と左前下行枝#7左側に血腫を認め,心尖部にblow out typeの心破裂,そして心エコー所見と同様に心室中隔中央にVSRを確認した.
【まとめ】心筋梗塞急性期の致死的合併症の特徴的な所見を心エコー図上にて観察しえた.来院したAMI例に対し速やかな心エコー検査の施行は合併症の早期発見に有用であり,救命に必要と考えられた.

5.巨大瘤を合併した右冠動脈‐右房瘻の一例

宮本 亜矢子1, 高木 覚2, 小林 みち子1, 松崎 純子1, 伴 由佳1, 楠亜 友美1, 藤井 徳幸2, 中野 淳2, 中原 学史2

1札幌社会保険総合病院検査部,2札幌社会保険総合病院内科・循環器科

【症例】61歳,女性
【既往歴】心疾患を指摘されたことはない.乳癌(53歳)
【現病歴】とくに症状はなかったが,健診の心エコー検査で異常を指摘され,当院循環器科を受診.胸部CT検査を施行したところ,右冠動脈瘤が疑われ精査目的で入院となった
【入院時心エコー検査】傍胸骨長軸像にて右冠動脈起始部は10mmと拡張していた.左室短軸像では,下壁から後壁付近の心嚢内に嚢腫様構造物が認められた.この構造物は心周期による形態の変化はなく,カラードプラー法では連続性の血流を認め,蛇行を繰り返しながら右房に開口していたため,冠動脈瘻の一部を観察していると推測された.シャント血流は,パルスドプラー法では最大流速160cm/secの連続性の血流パターンであった.以上の所見より,右冠動脈‐右房瘻と診断した.
【冠動脈CT検査】右冠動脈瘤の短径は15mmで,右房に開口し右冠動脈‐右房瘻となっていた.
【心臓カテーテル検査】右冠動脈造影では,巨大な瘤が造影され,瘤以遠で正常径の末梢右冠動脈が確認された.瘻血管は三尖弁中隔尖付着部で右房側に開口しており,Sampling dataから右室で酸素飽和度のstep-upを認めた.
【考察】冠動脈瘻は,冠動脈異常の中で最も多い疾患で,先天性心疾患の0.2〜0.4%を占めるとされている.本症例は,現在NYHAI度であり経過観察としたが,瘤が大きく破裂の危険も考えられ,手術を検討する方針である.2D心エコー検査では観察できなかった開口部の描出など,任意方向での断面が得られる3D心エコー検査は,手術時に有用な情報を提供できる可能性があり,3D心エコー検査の結果もあわせて報告する.
【結語】巨大瘤を合併した右冠動脈‐右房瘻の一例を経験した.

6.心エコーによる川崎病小児における冠動脈の同定と検出

布施 茂登1, 小林 徹2, 佐地 勉3

1NTT東日本札幌病院小児科,2群馬大学大学院小児科,3東邦大学医療センター大森病院小児科

【背景】川崎病は冠動脈に瘤形成をおこすことがある小児の血管炎症候群である.川崎病小児において冠動脈を正確に評価することは非常に重要である.現状では心エコーにより冠動脈の評価が適切に行われているのだろうか?
【方法】重症川崎病患者に対する免疫グロブリン・プレドニゾロン初期併用投与のランダム化比較試験研究における心エコー検査のDVD録画動画を後方視的に検討した.242例中,9例は不適切な録画のため除外され,233例において検討した.冠動脈の同定は,冠動脈番号#1,#2,#5,#6と#11,冠動脈の検出は#1,#2,#3,#5,#6,#7,#8と#11,分枝の検出は 円錐枝(CB),右室枝(RVB),第1対角枝(D1),第2対角枝(D2),中隔枝(SB),鈍角枝(OM)を検討した.統計学的検討はフィッシャーの方法で行った.
【成績】冠動脈の誤同定は25回,2.7%に認めた.10例以上の登録をした施設では,9例以下の登録をした施設より,誤同定が少なかった.(1.3% vs 3.5%,p<0.05)冠動脈の検出率は,#2,#7,#8,#11において有意に低値であった.(#1: 100%,#2: 84.5%**,#3: 100%,#5: 100%,#6: 100%,#7: 94.4%*,#8: 81.4%**,#11: 96.6%*;*: p<0.001,**: p<0.0001).冠動脈分枝の検出率ではRVB,D2,SB,OMにおいて有意に低値であった.(CB: 98.2%,RVB: 81.8%**,D1: 99.1%,D2: 82.2%**,SB: 91.4%**,OM: 93.1%*;*: p<0.001,**: p<0.0001)
【結論】冠動脈の同定に関しては,少ないながらも同定の誤りが認められた.冠動脈とその分枝の検出は#1,#3,#5,#6は問題なかったが,これら以外は検出率が低いものを認めた.とくに#2と#8の検出率の低さに問題があると思われた.心エコーによる冠動脈の同定,検出において,さらなる研鑽が必要と思われる.

7.心エコーで観察されるS字状中隔と体格指数との関係

水岡 由佳理1, 三神 大世2, 岡田 一範3, 小野塚 久夫2, 加賀 早苗4, 横山 しのぶ4, 西野 久雄4, 岩野 弘幸5, 山田 聡5, 筒井 裕之5

1北海道大学医学部保健学科,2北海道大学大学院保健科学研究院,3北海道大学大学院保健科学院,4北海道大学病院検査・輸血部,5北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学

【目的】S字状中隔は,心エコー検査で検出される加齢現象のひとつとしてよく知られているが,その成因はよくわかっていない.本研究では,S字状中隔の機序に肥満が関与するかどうかを検討した.
【方法】対象は,健常55例.年齢は20〜82歳(平均46±14歳)で,体格指数(BMI)は16.8〜27.9%(平均22.3±2.5%)であった.S字状中隔の程度を表す指標として,胸骨左縁長軸像から大動脈・心室中隔角(ASA)を計測した.また,Devereuxらの方法で左室心筋重量係数(LVMI)を,二断面ディスク法で左室駆出分画(EF)を計測した.
【結果】年齢とBMIとは有意の相関を示さなかったが,両者はそれぞれASAと有意に相関した(順にr=-0.70,p<0.001,r=-0.39,p<0.01).ASAを目的変数,年齢,BMI,心拍数,LVMI,EFを説明変数とする重回帰分析を行ったところ,年齢,BMI,EFの3者が,ASAの独立規定因子として選択された(順にp<0.001,p<0.01,p<0.05).
【考案】S字状中隔は,心エコー検査で検出される加齢現象のひとつとしてよく知られており,加齢に伴う大動脈延長が,その原因と考えられている.左室は,上下から大動脈と横隔膜に挟まれているので,もし大動脈の延長が心室中隔を変形させるのなら,左室はその反対側の前胸壁や横隔膜からも圧迫を受けているはずである.本研究で示された体格指数とS字状中隔との関係は,肥満が横隔膜を挙上させた結果として,十分説明できると考えられた.
【結論】加齢に伴うS字状中隔の発生には,肥満による横隔膜挙上が関与することが示唆された.

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血管

座長: 西田 睦(北海道大学病院検査・輸血部)

8.腎ドプラエコーによる腎血管抵抗値への拡張期体血圧の影響

小室 薫1, 横山 典子2, 寺井 正美2, 藤田 隆2, 野口 圭士1, 広瀬 尚徳1, 安在 貞祐1, 伊藤 一輔1, 米澤 一也3, 赤坂 和美4

1国立病院機構函館病院循環器科,2国立病院機構函館病院臨床検査科,3国立病院機構函館病院臨床研究部,4旭川医科大学病院臨床検査・輸血部

【背景】慢性腎臓病は心血管疾患の危険因子である.腎ドプラエコーによる腎動脈血管抵抗値(resistive index: RI)は腎機能に関連するとされる.我々は先に,RIと左室拡張機能指標が関連することを報告したが,RIが拡張期体血圧に影響されることが問題となった.
【目的】RIへの拡張期体血圧の影響を検討すること.
【方法】対象は有意なARを除外した394例.腎ドプラエコー法で左右腎内区域動脈でのRIを計測し,左右の平均値を算出した.心エコー法で左室心筋重量係数(LVMI),左房容積係数(LAVI)および僧帽弁輪の拡張早期最大速度e’と経僧帽弁血流の拡張早期成分Eとの比(E/e’)を計測した.エコー検査直後に仰臥位での血圧を測定した.RIと血清クレアチニン値(Cr),推定糸球体濾過量(eGFR),LVMI,LAVI,およびE/e’との相関関係と,また各々を拡張期体血圧で調整した偏相関係数を求めた.
【結果】RIはCrとは有意な正相関を,eGFRとは逆相関関係を認めた(r=0.30,p<0.0001;r=-0.38,p<0.0001).RIとCrおよびeGFRとの偏相関係数はそれぞれr=0.20,p<0.001;r=-0.31,p<0.0001であった.またRIは,LVMI,LAVI,およびE/e’との間に有意な正相関を示したが(r=0.30,p<0.0001; r=0.31,p<0.0001; r=0.40,p<0.0001),偏相関係数はそれぞれr=0.32,p<0.0001; r=0.42,p<0.0001; r=0.40,p<0.0001であり,いずれも相関は有意であった.
【結論】腎ドプラエコーによる腎血管抵抗値は腎機能,左室拡張機能指標と関連し,その関係は拡張期体血圧で補正しても保たれていた.

9.腎血管抵抗値と心血管疾患頻度との関係 -年齢を限定した対象での検討-

小室 薫1, 横山 典子2, 寺井 正美2, 藤田 隆2, 野口 圭士1, 広瀬 尚徳1, 安在 貞祐1, 伊藤 一輔1, 米澤 一也3

1国立病院機構函館病院循環器科,2国立病院機構函館病院臨床検査科,3国立病院機構函館病院臨床研究部

【背景】腎ドプラエコーによる腎動脈血管抵抗値(resistive index: RI)は腎機能に関連するとされる.慢性腎臓病が心血管疾患の危険因子であることが注目される中,RIが心血管疾患患者の病態評価の一助となることがわかってきた.しかしRIは年齢に強く影響され,高齢者ほど高値となることが問題となっている.
【目的】年齢を60歳台に限定した対象で,RIの高低での心血管疾患,危険因子の頻度を検討する.
【方法】対象は有意なARを除外した年齢60歳から69歳までの154例.腎ドプラエコー法で左右腎内区域動脈でのRIを計測し,左右の平均値を算出した.対象をRIが0.68未満(LowRI)と0.68以上(HighRI)の2群に分け,血清クレアチニン値,CKD stageの平均,推定糸球体濾過量(eGFR)および,高血圧症,高脂血症,糖尿病,虚血性心疾患,末梢血管疾患の頻度を比較検討した.
【結果】2群間の年齢に有意差なし(64±3歳vs 65±3歳).血清クレアチニン値,およびCKD stageの平均は有意にHighRI群の方が高値(1.1±0.7 vs 0.8±0.6,p<0.05; 2.6±0.9 vs 2.0±0.7,p<0.0001),eGFRは低値であった(58.7±24.1 vs 73.6±18.0,p<0.0001).両群間で虚血性心疾患を有する頻度に有意差はなかったが,末梢血管疾患の頻度はHighRI群で有意に高かった(17.3% vs 2.5%).また,高血圧症の頻度には差がなく,高脂血症,糖尿病の頻度はいずれもHighRI群で高かった(50.6% vs 32.9%;41.3% vs 11.4%).
【結論】腎血管抵抗値は比較的若年者であっても腎機能と関連し,さらにその高値は末梢血管疾患,高脂血症,糖尿病の有病率と関連する.

10.傍脊椎硬膜動静脈瘻の一例

河端 奈穂子1, 赤坂 和美2, 樋口 貴哉2, 柳谷 貴子2, 中森 理江2, 三井 宣幸3, 和田 始3, 安栄 良悟3, 鎌田 恭輔3, 長谷部 直幸1

1旭川医科大学循環・呼吸・神経病態内科学,2旭川医科大学病院臨床検査・輸血部,3旭川医科大学脳神経外科

 症例は69歳,女性.高血圧にて近医通院加療中であったが,2011年2月に起床時より右頸部にて拍動性の雑音を自覚し,当院脳神経外科を受診した.右頸部にて血管雑音を聴取するが,神経学的脱落症状は認めなかった.頸動脈超音波検査にて,下顎角の高さにて椎骨動脈(VA)からの動静脈瘻を認めた.シャント部は収縮期最高血流速度(PSV)223cm/s,拡張末期血流速度(EDV)は148cm/sであり,シャント部より末梢側のVAの血流は描出できなかった.右VAの起始部はPSV 180cm/sであったが,狭窄病変は認めず,動静脈瘻による血流量の増加とVAの蛇行によるPSV増加と考えられた.MRAと血管造影を施行し,直接タイプの傍脊椎硬膜動静脈瘻(C2レベル)と診断した.脳内出血や脊髄梗塞のリスクのために治療適応であり,6月全身麻酔下にコイル塞栓術を施行した.術後は右VAの血流速度はPSV 44cm/s,平均血流速度24cm/sと正常化し,シャント血流は認めなかった.術後の左VA平均血流速度は術前32cm/sから16cm/sへ減少しており,術前に左VAからunionを介して右VAを逆流しshuntに抜けていた血流がコイル塞栓術により消失したためと推察された.傍脊椎硬膜動静脈瘻について,文献的考察を含めて報告する.

11.下肢超音波検査が管理に有用であった周産期DVTの2症例

米原 利栄, 前田 悟郎, 嶋田 知沙, 中川 絹子, 千葉 健太郎, 東 正樹, 山口 辰美

釧路赤十字病院産婦人科

 妊娠中は,静脈血栓塞栓症(VTE)が生じやすくなる病態であり,肺血栓塞栓症(PTE)の発症予防という点でも,深部静脈血栓症(DVT)の早期診断,治療が重要となる.そして妊娠中に生じたDVTの画像診断は,造影CTにかわって超音波検査が主体となる.我々は,妊娠中に生じ,下肢超音波検査を用いて診断および管理したDVTの2症例について紹介する.
【症例1】27歳,BMI23,1経妊0経産.妊娠12週で悪阻による摂食困難のため入院し,補液を開始した.4日後左下肢の腫脹疼痛が出現し,下肢超音波検査にて左膝窩静脈から左大腿静脈にかけて血栓を認め,DVTと診断された.ダルテパリンナトリウム5,000単位の持続静注を開始し,症状およびデータの改善が得られた時点でヘパリンカルシウム皮下注に変更した.その後は再発無く経過し,38週で計画誘発分娩を試みたが遷延分娩のため帝王切開となった.術後の再燃やPTE発症は認めていない.
【症例2】33歳,BMI24,1経妊1経産.第1子が骨盤位のため選択的帝王切開術を施行後,下肢DVTを発症し治療した経緯あり.その後プロテインS欠損症と診断.ワーファリンを継続内服していたが,血栓消失し,ワーファリンを中止した後,第2子を妊娠.妊娠経過中はヘパリンカルシウム皮下注を継続し,38週で選択的帝王切開術を施行した.術後3日目に下肢超音波検査にて,術前には認めなかった左下腿静脈に血栓を認めた.以後,ワーファリンを継続内服中である.いずれの症例においても下肢超音波検査が,妊娠中のDVTの診断および管理に有用であった.静脈造影などの侵襲的な検査を躊躇する妊娠中のDVT評価には,D-dimerなどの血栓凝固線溶系検査と併用し,下肢超音波検査を用いての管理が有用であると考えられた.

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新技術

座長: 廣川 直樹(札幌医科大学放射線医学)

12.超音波診断装置および超音波造影剤による抗がん剤の抗腫瘍効果の増強

佐々木 東1, 中村 健介1, 工藤 信樹2, 滝口 満喜1

1北海道大学大学院獣医学研究科獣医内科学教室,2北海道大学大学院情報科学研究科生命人間情報科学専攻

【目的】超音波は非侵襲的であることから,診断のみならず治療への応用も期待されている.その中に超音波と,超音波造影剤に代表されるマイクロバブルを用いたドラッグデリバリー法がある.我々は,獣医療へ応用できる簡便かつ新たながん治療法として,超音波診断装置および超音波造影剤による抗がん剤のドラッグデリバリー法を研究している.今回,マウス移植腫瘍モデルを用いたin vivoでの検討で良好な結果を得たので報告する.
【方法】7週齢のBalb/c-nu/nuマウス背部皮下に犬甲状腺癌由来株細胞を接種した.腫瘍径が5mmに達した時点で治療を開始し(day0),隔日で計4回治療を行った(day0,2,4,6).マウスは以下の6群に分けた.A)無処置群,B)vehicle群:腫瘍注のみ,C)シスプラチン群:シスプラチン腫瘍注,D)バブル群:ソナゾイド®腫瘍注,E)バブル+超音波群:ソナゾイド®腫瘍注と超音波照射,F)シスプラチン+バブル+超音波群:シスプラチンおよびソナゾイド®腫瘍注と超音波照射.超音波照射は診断装置の造影モードを,送信周波数4MHz,MI1.6,表示深度2cm(焦点0.5 cm),FR78fpsに設定し,腫瘍注と同時に15秒間行った.治療効果の判定には腫瘍体積,副作用の判定には体重をそれぞれ用いた.
【結果】day6,18においてシスプラチン+バブル+超音波群の腫瘍体積は,無処置群と比較して有意に低値だった(P=0.01).その他の治療群の腫瘍体積には無処置群との有意差が存在しなかった.また,体重の変動には治療群による差がなかった.
【考察】超音波診断装置および超音波造影剤を併用することで,シスプラチンの抗腫瘍効果が増強され,腫瘍の成長が抑制された.一方,治療による明確な副作用は確認されなかった.診断装置および造影剤を用いる本手法は簡便かつ副作用の少ない新たながん治療法として期待される.

13.臨床用超音波診断装置を用いた造影超音波による肝のdrug delivery systemの基礎検討―自家蛍光内視鏡(AFI)を用いた蛍光腹腔鏡によるin vivo解析―

鈴木 康秋, 長谷部 拓夢, 澤田 康司, 阿部 真美, 大平 賀子, 大竹 孝明, 高後 裕

旭川医科大学消化器・血液腫瘍制御内科

【目的】臨床用超音波診断装置を用いた造影超音波による肝のdrug delivery効果のin vivo研究を,自家蛍光内視鏡(AFI)を用いた蛍光腹腔鏡により解析したので報告する.
【方法】1,マウスに超音波造影剤Sonazoid®と,蛍光色素Fluorescence;Fluを静脈投与し,超音波診断装置Aplio-XG,高周波プローブ(12MHz)を用いて肝臓に超音波を5分間照射した.投与1時間後に,Auto Fluorescence Imaging(AFI)を装備した細径自家蛍光内視鏡を腹腔内に挿入し,蛍光腹腔鏡として肝表面の観察を行った.比較対照の為,正常コントロール(PBS投与のみ),Fluorescence投与のみ,Sonazoid®とFluorescence投与のみ(超音波未照射)の各マウスも蛍光腹腔鏡を行った.2,培養肝癌細胞株におけるdrug delivery効果の in vitro解析として,肝癌細胞株(Huh7)の培養液中に,Sonazoid®と蛍光色素propidium iodide;PIの混合液を加え,超音波を30秒間照射し,蛍光顕微鏡にて観察を行い,細胞内への蛍光色素導入の有無を検討した.
【結果】1,蛍光腹腔鏡画像の蛍光強度解析の結果,正常コントロール(PBS投与)マウスは平均蛍光強度49.5,Flu単独投与マウスは547.1,Sonazoid®とFlu投与・超音波未照射マウスは959.3であったが,Sonazoid®とFlu投与・超音波照射マウスは2767.1と強い蛍光強度を認めた.2,各群における1視野平均蛍光陽性細胞数は,コントロール群は0,PI+Sonazoid® 投与・US未照射群は0.5,PI単独投与・US照射(MI 0.3)群は0.7,PI単独投与・US照射(MI1.0)群は1.5であったのに対し,PI+Sonazoid® 投与・US照射群では,低音圧(MI0.3)照射が10.3,高音圧(MI1.0)照射が16.7と有意に蛍光陽性細胞数が多かった.
【結語】マウス肝のin vivo解析,培養肝癌細胞株のin vitro解析いずれにおいても,臨床用超音波診断装置を用いた造影超音波による肝のdrug delivery効果の可能性が示唆された.

14.肺小細胞癌による転移性肝癌の3例

山崎 大1, 松居 剛志1, 辻 邦彦1, 姜 貞憲1, 志田 勇人1, 金 俊文1, 桜井 康雄1, 児玉 芳尚1, 真口 宏介1, 遊佐 亨2, 義達 仁美2, 二ツ森 絵美子2

1手稲渓仁会病院消化器病センター,2手稲渓仁会病院エコーセンター

【はじめに】肺小細胞癌は肺癌の約15%を占めるが,原発巣不明の時点で転移性肝癌として発見される場合もあり,しばしば診断に苦慮する.今回,基礎肝疾患があり,肝細胞癌との鑑別を要した肺小細胞癌による転移性肝癌の3例を経験したので報告する.
【症例1】73歳男性.慢性C型肝炎で他院通院中に肺癌精査のため当院紹介.USにて肝S8に24mmの境界明瞭,内部モザイク様の類円形の腫瘤像を認めた.さらに造影USの血管相では強い染影を認め,その血管影はバスケットパターンを呈し,後血管相では類円形のdefectとなった.同部より肝生検を行い小細胞癌と診断した.
【症例2】72歳男性.アルコール性肝障害と結節性肺病変にて当院通院中.スクリーニングUSにて肝S5に9mmのbull’s eye様の低エコー腫瘤像を認めた.造影USの血管相では強く染影され,後血管相では類円形のdefectとなった.同部の肝生検にて小細胞癌と診断されたものの,肺病変に関しては4mmと小さく確定診断には至らず,肝病変に関して肝部分切除術を行った.その後,肺病変は増大し,肺小細胞癌と診断した.
【症例3】56歳男性.慢性C型肝炎でフォロー中.52歳時に肺癌にて化学療法を受け,CRとなっていた.スクリーニングUSにて肝S6に20mmの境界やや不明瞭で内部不均一な類円形の低エコー腫瘤像を認めた.造影USの血管相では周囲と同程度の染影を呈し,八頭状のdefectとなった.その後肺病変も認め,肺小細胞癌と診断した.
【まとめ】肺小細胞癌による転移性肝癌の3例にUS及び造影USを施行した.肺小細胞癌による転移性肝癌のUSと造影USの特徴は様々であり,肝細胞癌との鑑別は容易ではなく,診断には留意する必要がある.

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ストレイン

座長: 小室 薫(国立函館病院循環器科)

15.S字状中隔と左室心筋弛緩との関係:二次元スペックルトラッキング法による検討

岡田 一範1, 三神 大世2, 加賀 早苗3, 小野塚 久夫2, 横山 しのぶ3, 西野 久雄3, 中鉢 雅大3, 岩野 弘幸4, 山田 聡4, 筒井 裕之4

1北海道大学大学院保健科学院,2北海道大学大学院保健科学研究院,3北海道大学病院検査・輸血部,4北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学

【目的】加齢に伴う左室拡張機能障害の機序についてはまだ不明の点が多い.今回我々は,二次元スペックルトラッキング(2DST)法を多断面で行い,左室変形と左室心筋弛緩との関係を検討した.
【方法】対象は健常32例.2DST法により,心尖部長軸像,二腔像,四腔像のそれぞれで長軸方向の拡張早期ピークグローバルストレインレート(LGEsr)を計測した.中部左室短軸像から,円周方向のピークグローバルEsr(CGEsr)を求めた.また,左室の6壁各々で,壁ごとの長軸方向Esr(LEsr)と,円周方向Esr(CEsr)を算出した.胸骨左縁長軸像から,大動脈-心室中隔角(ASA)を計測した.
【結果】ASAは心尖部長軸像,二腔像,四腔像のLGEsrとそれぞれ有意に相関したが(順にr=0.70,p<0.001,r=0.42,p<0.05,r=0.55,p<0.01),CGEsrとは相関しなかった.一方,年齢は心尖部長軸像のLGEsrと有意に相関したが(r=-0.43,p<0.05),他の断面のLGEsrおよびCGEsrとは相関しなかった.壁ごとにみると,ASAは前壁中隔,中隔,下壁および側壁のLEsrと有意に相関し(順にr=0.37,p<0.05,r=0.45,p<0.01,r=0.54,p<0.01,r=0.49,p<0.01),中でも下壁のLEsrとASAとの相関が強い傾向を認めた.年齢は前壁中隔のLEsrのみと有意に相関した(r=-0.42,p<0.05).各6壁のCEsrはいずれもASAおよび年齢と有意な相関を認めなかった.
【結論】加齢やS字状中隔の程度は左室心筋の長軸方向の弛緩障害と関係したが,円周方向のそれとは関係しなかった.長軸方向の弛緩障害は,年齢よりASAとよく相関する傾向を示した.健常人の加齢に伴う左室長軸方向の弛緩障害,とくに下壁のそれの原因として,S字状中隔に伴う下壁の横隔膜による圧迫の関与が示唆された.

16.心筋層別ストレイン計測による心筋機能と心室機能の評価:肥大型心筋症における検討

岡田 一範1, 山田 聡2, 三神 大世3, 岩野 弘幸2, 小野塚 久夫3, 加賀 早苗4, 横山 しのぶ4, 西野 久雄4, 筒井 裕之2

1北海道大学大学院保健科学院,2北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学,3北海道大学大学院保健科学研究院,4北海道大学病院検査・輸血部

【背景】肥大型心筋症(HCM)では長軸方向ストレインが低下するが,円周方向ストレイン(CS)は低下するという報告と増加するという報告がある.本研究では心内膜側と中層のCSを分けて計測し,それらの意義について検討した.
【方法】対象はHCM 18例と健常(N)21例.東芝社製Artidaを用い,中部左室短軸像の二次元スペックルトラッキング法により,心内膜側と中層のピークグローバルCS(各々CSinner,CSmw)を求めた.左室駆出率(LVEF)とmid-wall fractional shortening (mwFS)を計測した.
【結果】HCM群の心室中隔厚(19±6mm),後壁厚(10±1 mm)および左室心筋重量係数(LVMI; 175±43g/m2)はN群より有意に大であり,左室径(48±4mm)は両群に差を認めなかった.LVEFはHCM群とN群で差を認めなかったが(70±8% vs 66±6%),mwFSはHCM群で有意に小であった(19±5% vs 25±3%,p<0.001).CSmwはHCM群で有意に小であったが(-9±3% vs -13±3%,p<0.001),CSinnerは両群に差を認めなかった(-23±6% vs -23±5%).CSinnerはLVEFと有意に相関し(r=-0.47,p<0.01),CSmwはLVMI(r=0.52,p<0.001)およびmwFS(r=-0.52,p<0.001)と有意に相関した.CSinnerとCSmwの差は,平均壁厚と有意に相関した(r=-0.42,p<0.01).
【結論】HCMの中層CSは低下しており,心筋本来の円周方向短縮機能を反映すると考えられた.一方,心内膜側CSは壁厚増大による代償のため正常に保たれていると考えられる.心筋層別のCS計測により,心筋固有の収縮機能と心室レベルの収縮機能を別々に評価できる可能性がある.

17.収縮同期不全による左室全体収縮機能の損失分を表すストレインレート指標:心臓再同期療法慢性効果の予測

岩野 弘幸1, 山田 聡1, 西野 久雄2, 横山 しのぶ2, 加賀 早苗2, 小野塚 久夫3, 三神 大世3, 筒井 裕之1

1北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学,2北海道大学病院検査・輸血部,3北海道大学大学院保健科学研究院

【背景】心エコー法による左室収縮同期不全の評価には局所心筋収縮の時間差の指標が用いられているが,本来は同期不全により損なわれる左室全体の収縮機能を評価すべきである.我々は,心筋ストレインレート(SR)を用いた新たな指標(strain rate dispersion index:SRDI)を考案し,心臓再同期療法(CRT)後の左室容積の慢性変化との関連を時間差の指標と比較して検討した.
【方法】26例を対象に,CRT前と6ヶ月後に心エコー検査を行った.組織ドプラ法によりYu indexを求めた.2次元スペックルトラッキング法により,四腔像の長軸方向ストレイン(St)と短軸像の円周方向Stから断面内6領域における最大Stの時相の標準偏差(各々LS-SD,CS-SD)を求めた.各時相における断面内6領域のSRの平均値をglobal SRとし,{(領域ごとのSR収縮期最大値の平均値)-(global SR収縮期最大値)}をSRDIとした.CRT6ヶ月後の左室収縮末期容積の変化率(ΔESV)<-15%であった例と,6ヶ月後にNYHA心機能分類が1以上改善した例をCRT反応群と定義した.
【結果】CRT前のQRS幅,Yu index,CS-SDには反応群(17例)と非反応群(9例)で差はなかったが,LS-SD,長軸方向SRDI(L-SRDI),円周方向SRDI(C-SRDI)は反応群で有意に高値であった.QRS幅,Yu indexはΔESVと相関しなかったが,LS-SD,CS-SD,L-SRDI,C-SRDIはΔESVと有意に逆相関した(LS-SD:r=-0.41,CS-SD:r=-0.53,L-SRDI:r=-0.45,C-SRDI:r=-0.53).多変量解析では,C-SRDIのみがΔESV の独立規定因子であった(β=-0.53,p<0.01).反応群を予測するROC曲線下面積はYu indexで0.69,LS-SDで0.79,CS-SDで0.57,L-SRDIで0.88,C-SRDIで0.78であった.
【結論】新しい指標SRDIは,心筋ストレインの時間差の指標よりも良好にCRT反応群を予測できた.

18.発作性心房細動患者の左房strainおよび左房synchronyの評価:3次元スペックルトラッキング法による検討

川向 美奈1, 湯田 聡1, 2, 大井 由紀子3, 望月 敦史1, 村中 敦子1, 下重 晋也1, 橋本 暁佳1, 土橋 和文1, 渡邉 直樹2, 三浦 哲嗣1

1札幌医科大学医学部第二内科,2札幌医科大学医学部臨床検査医学,3札幌医科大学附属病院検査部

【目的】3次元スペックルトラッキング(3DS)法を用いた左室strainおよびsynchronyの評価が報告されているが,左房に関する検討はこれまでなされていない.そこで今回,発作性心房細動(PAF)患者の左房strainおよびsynchronyを3DS法で解析し,健常者のそれらと比較検討した.
【対象及び方法】健常者77名(N群)と非弁膜症性PAF患者18名(PAF群)を対象とした.超音波診断装置(東芝メディカル社製 Artida)で,心尖部左室二腔,四腔像を取り込み,左房容積(LAV)を求めた.3次元エコーで左房を記録後,専用解析ソフトを用いて左房内膜をトレースし,3DS法により左房の最大容積(3D-LAV),長軸方向strain(3D-LS),円周方向strain(3D-CS)及び内膜面積変化率(3D-AS)を計測した.左房のsynchrony指標は,左房16領域においてR波から3D-LS,3D-CS,3D-ASまでの時間を計測し,その標準偏差をR-R時間で補正し求めた(LS-SD,CS-SD,AS-SD).
【結果】N群に比べPAF群では,3D-LS(28.0±7.4 vs. 14.3±7.1%),3D-CS(32.6±11.6 vs. 20.0±12.1%)と3D-AS(71.0±22.9 vs. 40.0±23.4%)は有意に低値(p<0.01)であった.一方,LS-SD(9.0±4.5 vs. 16.6±6.5%),CS-SD(14.4±5.9 vs. 19.9±7.9%)とAS-SD(9.7±5.5 vs. 15.4±8.3%)は,有意にPAF群で高値(p<0.01)であった.PAF群を,左房拡大がない(LAV<29ml/m2)5名(A群)と,有る(LAV≧29ml/m2)13名(B群)の2群に分けた.N群に比べ,A群の3D-LS(11.7±6.2%)と3D-AS(41.7±31.7%)は有意に低値(p<0.01),LS-SD(16.8±1.7%)は有意に高値(p<0.01)であった.
【結果】3DS法により,PAF患者の左房strainの低下および左房のdyssynchronyが検出可能であった.PAF患者では,左房拡大を認めない段階から,3D-LSや3D-ASが低下し,LS-SDが延長していることが明らかになった.

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座長: 赤坂 和美(旭川医科大学臨床検査医学)

19.重症大動脈弁狭窄症に伴う拡張機能障害〜L波の臨床的意義〜

長瀬 雅彦, 永森 祐衣, 三浦 美里, 小野寺 英里

市立旭川病院中央検査科生理機能検査室

【背景】Mid diastolic MV flow(拡張中期波)はL波とも呼ばれ,正常では徐脈の状態で発生しやすく左室recoi1が強いために,拡張中期まで順行性血流を認め検出されると言われている.一方,病的状態では心不全や左室肥大,収縮機能不全などで見られ能動的拡張が遅延し偽正常化を示唆するものと考えられている.
【目的】大動脈弁狭窄症における拡張機能障害及びL波の臨床的意義について検討すること.
【対象】左室駆出率が正常な症例で,連続波ドプラ法にて左室―大動脈弁圧較差(ASPG)が最大100mmHg(平均 60mmHg)以上で,他に有意な弁膜症を有しない59歳〜86歳の22例(平均74.6歳)である.このうち,拡張中期波を有する62歳-86歳 (平均77歳)8例をL群,拡張中期波を有しない59歳-84歳 (平均73.2歳)までの14例をnon L群として超音波像の検討を行った.
【結果】年齢,E/AやDcTでは両群間に有意差を認めないが,L群ではE/e’(P=0.05)の低下を有しASPG(P=0.02)が高く心筋重量の増加を伴い,左房径(P=0.04),左房容量(P=0.03) は,ともにL群で拡大傾向を示した.また,ドプラ法による大動脈弁口面積は有意差を認めないもののL群で小さかった.
【考察】大動脈弁狭窄症に拡張中期波を有するL群では,ASPGは高く弁口面積も小さい傾向にあり,左室肥大や左房負荷,E/e’増加を伴うことから拡張遅延と充満圧の増加がL波を誘発させ,偽正常化の状態にあるものと考えられた.また,AVRにてASを解除した3例ではL波の消失を認めたことから,ASがL波の成因に関与していると考えられた.
【結論】重症大動脈弁狭窄症では,正常心拍出量であっても求心性性肥大により左房機能に依存する割合が強い,L波はこのような状況下における偽正常化のサインと考えられた.

20.硬化性大動脈弁狭窄症と硬化性僧帽弁狭窄症が合併した1例

越智 香代子1, 中島 朋宏1, 山口 翔子1, 網谷 亜樹1, 矢戸 里美1, 石川 嗣峰1, 工藤 朋子1, 大村 祐司1, 男澤 千啓1, 中西 克彦2

1医療法人渓仁会手稲渓仁会病院臨床検査部,2医療法人渓仁会手稲渓仁会病院心臓血管センター心血管外科

【背景】硬化性大動脈弁狭窄症(硬化性AS)と僧帽弁輪石灰化(MAC)の合併は高率にみられるが,弁の硬化・石灰化が僧帽弁全体に波及した,硬化性僧帽弁狭窄症(硬化性MS)と硬化性ASが合併した症例は稀である.
【症例】71歳女性.2011年2月,労作時息切れが増悪し,心エコーにてASとMSが認められたため,手術目的に当院入院.術前の心エコーでは僧帽弁後尖のMACと僧帽弁全体の高度硬化・石灰化による開放制限(圧較差20mmHg,僧帽弁口面積1.3cm2)が認められたが,弁尖の可動性は評価できなかった.一方,硬化性ASは大動脈弁圧較差122mmHg,大動脈弁口面積0.7cm2であった.経食道エコーでは,僧帽弁弁尖の一部に可動性が保たれて開放していたが,弁輪から弁腹までは高度に硬化・石灰化し,両弁尖とも弁腹の可動性は殆どなかった.同年5月に大動脈弁置換術・僧帽弁置換術・三尖弁縫縮術を施行した.術後の病理所見では両弁とも硬化が原因であった.
【考案】高齢者の増加に伴い硬化性ASが増加したと同様に,今後,硬化性MSの増加が予想される.経食道エコーは弁尖の可動性を評価でき,原因診断に有用であった.弁尖以外,可動性の消失した硬化性MSは弁置換以外に有用な治療法はなく,高齢者での手術適応判定は硬化性AS以上に難しいと考えられる.

21.大動脈弁狭窄を呈した生体弁感染症の一例

村椿 真悟1, 村中 敦子1, 湯田 聡2, 田淵 正樹3, 村木 里誌3, 橋本 暁佳1, 2, 高木 伸之3, 土橋 和文1, 樋上 哲哉3, 三浦 哲嗣1

1札幌医科大学第二内科,2札幌医科大学臨床検査医学,3札幌医科大学第二外科

【症例】65歳,女性.
【主訴】発熱. 
【現病歴】55歳時にバルサルバ洞破裂に対して大動脈弁形成術施行.右冠尖逸脱による大動脈弁逆流増加のため,2011年4月20日生体弁(Magna 19mm)による大動脈弁置換術施行.術後良好に経過し4月27日に施行した経胸壁エコー(TTE)では,大動脈弁位最大通過速度(Max V)2.4m/s,平均圧較差 (mean PG) 16.4mmHg,有効弁口面積(EOAI)1.1cm2/m2,弁周囲逆流認めず,弁機能不全は認めなかった.5月8日に自宅退院したが発熱出現,近医にて抗菌剤投与受けるも改善乏しく,5月26日当院入院.
【入院時現症】血圧96/54mmHg,脈拍104/分・整,体温37度,意識清明.心音:胸骨右縁第二肋間にて収縮期駆出性雑音聴取Levine 3/6,肺ラ音を聴取せず,下腿浮腫軽度.神経学的異常を認めず.
【検査所見】TTEにて,疣贅,弁逆流や弁座の動揺を認めなかったが,Max V 3.8m/s,mean PG 37.4mmHg,EOAI 0.65cm2/m2と中等度大動脈弁狭窄を認めた.経食道エコー(TEE)にて,弁尖全体の肥厚と開放制限を認めたが,弁周囲逆流,疣贅の付着や弁輪膿瘍を疑う所見は認めなかった.血液培養からStaphylococcus hominis(MRS)が検出され,人工弁感染症が疑われたが,塞栓症の危険性は低く,血行動態も保たれていたため,抗菌剤による保存的加療の方針となった.しかし,5月30日の頭部MRIで亜急性の多発性脳梗塞を認めたためTEE再検.前回と同様の弁肥厚に加えて,左室流出路側に可動性に富む疣贅と弁輪膿瘍を疑う所見を認めた.
【治療経過】5月30日に再大動脈弁置換術施行.術中所見にて弁尖全体の肥厚と弁輪膿瘍が確認された.機械弁(SJM Regent 17mm)にて置換.術後発熱の再燃無く経過.6月24日のTTEにて,弁機能不全認めず,Max V2.8m/s,mean PG 15.7 mmHg,EOAI 1.21cm2/m2と改善を認めた.
【考案】生体弁感染症による弁肥厚により狭窄を認めた稀な一例を経験したので報告する.

22.子宮体癌に合併しヘパリン療法が奏効した無菌性血栓性心内膜炎の1例

横山 しのぶ1, 山田 聡2, 加賀 早苗1, 小田切 哲二3, 西野 久雄1, 岩野 弘幸2, 西田 睦1, 澁谷 斉1, 重松 明男1, 渡利 英道3, 小野塚 久夫4, 清水 力1, 三神 大世4, 筒井 裕之2

1北海道大学病院検査・輸血部,2北海道大学大学院循環病態内科学,3北海道大学病院婦人科,4北海道大学大学院保健科学研究院

 症例は40歳代,女性.2010年10月の健診でCA19-9の高値を指摘され,12月に精査目的で当院受診し,子宮体癌III期以上の疑いの診断となった.2011年3月に経過観察目的で施行したPET/CTで脳梗塞が検出され,塞栓源の検索のため4月15日に心エコー施行.僧帽弁後尖middle scallopの内側寄りの部位に付着する腫瘤エコー(幅9mm,長さ7mm程度)と同部位より中等度の弁逆流を認めた.感染性心内膜炎の疣腫,偶発性の腫瘍,無菌性血栓性心内膜炎(NBTE)が鑑別にあげられた.当院初診時より発熱はなく炎症反応もほぼ陰性であり,感染性心内膜炎は否定的であった.原発性・続発性腫瘍は否定できないが,典型的なものは考えにくかった.4月6日よりD-ダイマーが異常高値であり,子宮体癌があることから,NBTEが強く疑われた.診断的治療の目的でヘパリンの投与が開始され,心エコーでの慎重な経過観察となった.僧帽弁に付着する腫瘤エコーは徐々に縮小し,弁逆流も徐々に減少していった.6月16日の心エコーでは腫瘤エコーは消失し,軽度の弁逆流を認めるのみであった.現在,子宮体癌に対する化学療法を施行し,手術待機中である.
子宮体癌に合併し,ヘパリン療法が奏効して弁逆流が減少したNBTEの1例を経験したので報告する.

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症例

座長: 大村 卓味(札幌厚生病院第3消化器科)

23.肺小細胞癌による転移性肝癌の3例

山崎 大1, 松居 剛志1, 辻 邦彦1, 姜 貞憲1, 志田 勇人1, 金 俊文1, 桜井 康雄1, 児玉 芳尚1, 真口 宏介1, 遊佐 亨2, 義達 仁美2, 二ツ森 絵美子2

1手稲渓仁会病院消化器病センター,2手稲渓仁会病院エコーセンター

【はじめに】肺小細胞癌は肺癌の約15%を占めるが,原発巣不明の時点で転移性肝癌として発見される場合もあり,しばしば診断に苦慮する.今回,基礎肝疾患があり,肝細胞癌との鑑別を要した肺小細胞癌による転移性肝癌の3例を経験したので報告する.
【症例1】73歳男性.慢性C型肝炎で他院通院中に肺癌精査のため当院紹介.USにて肝S8に24mmの境界明瞭,内部モザイク様の類円形の腫瘤像を認めた.さらに造影USの血管相では強い染影を認め,その血管影はバスケットパターンを呈し,後血管相では類円形のdefectとなった.同部より肝生検を行い小細胞癌と診断した.
【症例2】72歳男性.アルコール性肝障害と結節性肺病変にて当院通院中.スクリーニングUSにて肝S5に9mmのbull’s eye様の低エコー腫瘤像を認めた.造影USの血管相では強く染影され,後血管相では類円形のdefectとなった.同部の肝生検にて小細胞癌と診断されたものの,肺病変に関しては4mmと小さく確定診断には至らず,肝病変に関して肝部分切除術を行った.その後,肺病変は増大し,肺小細胞癌と診断した.
【症例3】56歳男性.慢性C型肝炎でフォロー中.52歳時に肺癌にて化学療法を受け,CRとなっていた.スクリーニングUSにて肝S6に20mmの境界やや不明瞭で内部不均一な類円形の低エコー腫瘤像を認めた.造影USの血管相では周囲と同程度の染影を呈し,八頭状のdefectとなった.その後肺病変も認め,肺小細胞癌と診断した.
【まとめ】肺小細胞癌による転移性肝癌の3例にUS及び造影USを施行した.肺小細胞癌による転移性肝癌のUSと造影USの特徴は様々であり,肝細胞癌との鑑別は容易ではなく,診断には留意する必要がある.

24.類洞拡張の目立つ肝過形成結節の1例

木村 睦海1, 佐藤 隆啓1, 荒川 智宏1, 中島 知明1, 桑田 靖昭1, 小関 至1, 大村 卓味1, 狩野 吉康1, 豊田 成司1, 市原 真2, 村岡 俊二2

1札幌厚生病院第三消化器科,2札幌厚生病院臨床病理科

 今回我々は,肝過形成結節がみられたアルコール性肝硬変の1例を経験したので報告する.症例は58歳男性.アルコール多飲歴あり.平成23年5月,自宅で吐血し前医受診.貧血を認め上部消化管内視鏡検査を施行.食道静脈瘤を認めたが,明らかな出血源を確認できず保存的に加療.一方で腹部CT検査にて肝硬変の所見と共に,肝S3とS5に動脈相早期で染まる腫瘤像を認めた.貧血改善し前医退院.精査加療目的に当院紹介.6月2日に当院入院.肝腫瘤の精査として,腹部dynamic-CT検査,肝MRI検査,腹部超音波検査,Sonazoid®造影超音波検査を施行した.肝S3に11mm,10mm,S2に14mmの腫瘤像を認め,画像所見よりいずれも境界病変〜高分化型肝癌で一部脱分化を伴うものと考えられた.一方で,S5に認めた径24mmの腫瘤は,Bモードでは結節状の比較的境界明瞭な淡いlowで,内部にhighの部分を伴っていた.Sonazoid®造影では,vascular phaseで内部に細かな血管様の濃染像を示し,post vascular phaseではdefectは認めなかった.肝細胞癌としては非典型的な所見であり,過形成結節,炎症性偽腫瘍,peliosisなどが考えられた.S5病変に対して腫瘤生検を施行.病理組織検査で類洞拡張の目立つ過形成結節という所見が得られた.S5病変は経過観察とし,S3・S2病変に対しては経皮的治療を施行した.また上部消化管内視鏡検査にてRCsign陽性の食道胃静脈瘤を認め,内視鏡的静脈瘤硬化療法を計4回施行した.肝過形成結節の1例を経験した.若干の文献的考察を加えて報告する.

25.造影超音波ガイド下腎生検にて確定診断された血管内リンパ腫の一例

堀江 達則1, 西田 睦2, 阿保 大介3, 曽山 武士3, 石坂 香織1, 佐藤 恵美1, 井上 真美2, 工藤 悠輔2, 表原 里実2, 和田 妙子2, 岩井 孝仁2, 石坂 欣也1, 白井 慎一4, 佐々木 秀直4

1北海道大学病院診療支援部放射線部,2北海道大学病院診療支援部検査・輸血部,3北海道大学病院放射線科,4北海道大学病院神経内科

【背景】血管内リンパ腫(IVL)は,腫瘤形成は希で,血管内を主座とする病変のため,組織学的な診断が非常に困難であり,剖検まで確定診断されない場合が多い.適切な治療のためには早期の組織学的な確定診断が必須である.
【症例】46歳男性.
【臨床経過】2009年6月頃から左足筋力低下と右大腿後面の知覚低下・異常知覚を認め,2010年1月より排尿困難感出現.2010年8月造影CTにて脾腫,両腎に造影効果不良な結節性病変を多数認めた.IVLを疑い,8月両側大腿と腹部皮膚,9月左大腿二頭筋,骨髄から生検施行.IVLの所見なし.両腎に対し生検試るも,B mode USでは結節同定困難であった.そのため,Volume navigationにてCTとUSとのfusionを行った.腎皮質内のLDAは,境界不明瞭な高エコー結節病変としてわずかに認識可能となった.病変の正確な位置確認のため,造影US施行.early vascular phaseにてCTで指摘したLDAに一致して境界明瞭な造影効果不良域を認めた.late vascular phaseにてはdiffuseに濃染.parenchymal phaseにて造影効果は周辺腎皮質とほぼ同等となり,認識困難となった.穿刺直前にre-injection施行し,early vascular phaseにて造影効果の不領域に対し,生検施行.組織学的にIVLの確定診断となった.腎生検と同時期に診断目的に施行した脾摘にてはIVLの確定診断はえられなかった.R-CHOP療法施行され,現在腎,骨髄病変は消失している.
【まとめ】CTとUS画像のfusionによる造影超音波ガイド下針生検が確定診断に有用であったIVLの症例を経験したので報告した.

26.造影超音波が診断に有用であった肝門部リンパ節結核の1例

長谷部 拓夢, 鈴木 康秋, 堂腰 達矢, 河本 徹, 杉山 祥晃, 澤田 康司, 笹島 順平, 阿部 真美, 小泉 一也, 水上 祐輔, 大平 賀子, 大竹 孝明, 高後 裕

旭川医科大学消化器・血液腫瘍制御内科

 症例は60歳代の男性.アルコール性慢性膵炎,糖尿病の診断にて当院で通院加療されていた.上腹部痛と全身倦怠感が出現し腹部CT検査を施行,肝門部に径6cmの腫瘤を認め精査入院となった.血液生化学検査では,WBC,CRPの軽度上昇を認めたほかは異常を認めなかった.腫瘍マーカーはsIL2-Rが758と軽度高値以外は異常を認めず,造影CTでは嚢胞の集簇様構造を呈し,内部は造影不良で辺縁がわずかに造影され,腫大した肝門部リンパ節が集簇・癒合した病変と考えられた.MRIでは,T1WIで低信号,T2WIでは軽度高信号,拡散強調画像では辺縁優位に高信号を呈した.Gaシンチでは,比較的強い集積を認めた.超音波では,肝門部に肝と接して,内部が分葉状のlow echo,辺縁がhigh echoの腫瘤を認めた.造影超音波(PS-low法,VRI法)では,辺縁のhigh echoのみ強く造影され,内部のlow echoは造影されなかった.我々の検討では,悪性リンパ腫や癌の転移による腹腔内リンパ節腫大は,造影超音波にて均一に造影されることが多く,本症例はこれら悪性病変ではなく,結核などによる感染性リンパ節炎が疑われた.経皮的エコー下生検では悪性細胞を認めず,炎症性細胞の集塊を伴う壊死組織の所見のみで抗酸菌染色は陰性であったが,クォンティフェロンTB検査は強陽性であり,肝門部リンパ節結核と診断した.RFP,INH,EBの投与後,縮小を認めている.我が国では年間3万5千人の新規結核患者が発生し,再興感染症として注目されている.しかし,腹腔内リンパ節結核は全結核例の0.1%と稀(肝門部リンパ節結核の報告は9例のみ)であり,孤発性の場合は悪性疾患との鑑別を要する.超音波では,low echoを呈する集簇性の腫瘤で一部は膿瘍像を呈し,造影CTでは約9割がring enhanceを呈すると報告されている.本症例では,造影超音波はこれらの所見を描出しており,診断に有用と考えられた.

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肝・胆・膵

座長: 鈴木 康秋(旭川医科大学消化器・血液腫瘍制御内科)

27.IPMN由来浸潤癌・IPMCと通常型膵癌のエコー輝度および造影能の比較検討

齊藤 正人1, 廣川 直樹1, 佐藤 大志1, 宇佐見 陽子1, 鷲尾 嘉一1, 荒谷 和紀1, 笠原 理子1, 河合 有里子1, 晴山 雅人1, 神山 直久2, 長澤 由紀子2

1札幌医科大学医学部放射線医学講座,2東芝メディカルシステムズ

【目的】IPMN由来浸潤癌やIPMCは通常型膵癌と比べエコー輝度が高い傾向があり,上記検証の目的に両者のエコー輝度を定量化し比較検討する.
【対象・方法】2007年1月〜2011年3月までに当科でUS検査施行した膵腫瘤のうち,外科切除され病理診断が確定しているIPMN由来浸潤癌・IPMC11例,通常型膵癌29例が対象.解析用ソフトImage Lab aviでのオフライン解析にて輝度定量化施行.検討項目1)膵癌エコー輝度と正常膵実質のエコー輝度比較 2)IPMN由来浸潤癌・IPMC群と通常型膵癌での腫瘍輝度比較 3)腫瘍輝度と腫瘍サイズ・間質量・浸潤増殖様式の関係 4)IPMN由来浸潤癌・IPMC群と通常型膵癌での造影能比較.それぞれt検定を用い有意差を評価した.
【結果】エコー輝度平均膵癌-39.2dB(IPMN由来浸潤癌:-34.5dB,通常型膵癌:-40.9dB),正常膵実質エコー輝度平均-29.21dB.1)膵癌エコー輝度と正常膵実質エコー輝度の間にp<0.05で有意差を認める.2)IPMN由来浸潤癌・IPMC群と通常型膵癌の間ではp<0.05で有意差を認める.3)TSごとに輝度に一定の傾向なし.間質量をintermediated typeとscirrhoud typeの2群間の輝度に有意差はなし.INFβとINFγの2群間での輝度に有意差なし.4)8secまでの検討でIPMN由来浸潤癌・IPMC群と通常型膵癌群の造影能に有意差なし.
【考察】膵癌エコー輝度の定量化にて,IPMN由来浸潤癌・IPMC群と通常型膵癌の間での輝度の有意差があり両者の鑑別の一助となりうる.間質量や浸潤様式に輝度値の有意な差がみられずIPMN群の輝度上昇の原因としては,凹凸不整な乳頭状腫瘤によって形成される微小腔による多重反射など形態要素の関与があるのではないかと推定される.
【結語】IPMN由来浸潤癌・IPMC群では通常型膵癌よりも輝度が高くなることが示唆された.造影能での両者鑑別は難しくB-mode所見がより重要と考える.

28.肝癌における造影USとMDCTの比較

麻生 和信, 岡田 充巧, 玉木 陽穂, 須藤 隆次, 太田 雄, 羽田 勝計

旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野

【目的】第二世代超音波造影剤の臨床応用に伴い,肝癌に対する造影USの診断能は確実に向上している.そこで,今回はMDCTとの比較からみた肝癌における造影USの診断能について検討した.
【対象と方法】肝癌診療マニュアル第二版に準拠し,画像または病理で診断した肝細胞癌連続339結節を対象とした.腫瘍径は2.9〜94.0mm(平均24.1mm),体表から腫瘍深部までの深さは1.9〜13.5cm(平均6.4cm)であった.Bモード検出率は89.0%(196/216)であった.使用装置は東芝Aplio XG.Sonazoid®は0.015mL/kgをボーラス投与し,Pulse Subtraction Imagingの低音圧モードとMicro Flow Imagingを用いて撮像した.肝癌の存在診断,質的診断,肉眼型評価における造影USの診断能をB-mode,MDCTと比較検討した.
【結果】1.腫瘍検出率はB-mode/MDCT/造影USそれぞれ87.6%/96.8%/98.2%であり,造影USの存在診断能は統計学的にB-modeよりも有意に高く(P<0.01),MDCTと差は認めなかった.この傾向は腫瘍径10mm以下で顕著であり,B-modeの46.2%に対し造影USでは100%と大幅な差を認めた.2.肝癌の正診率はB-mode/MDCT/造影USそれぞれ52.8%/91.5%/98.2%であり,造影USの質的診断能は統計学的にB-modeよりも有意に高く(P<0.01) ,MDCTと差は認めなかった.3.肝癌肉眼型の正診率はB-mode/MDCT/造影USそれぞれ53.3%/40.0%/80.0%であり,造影USは統計学的にB-modeおよびMDCTよりも有意に優れていた(P<0.01).
【結語】肝癌における造影USの診断能はMDCTと比べ同等もしくはそれ以上であり,特に肝癌肉眼型などの精密形態診断に有用であることが示唆された.

29.ソナゾイド®造影超音波検査による胆嚢隆起性病変の検討

中村 俊一1, 菅原 司1, 片石 慎一1, 岩間 寛1, 野瀬 弘之1, 大野 竜一1, 東 弘志1, 内田 多久實2, 藤永 明2

1JA北海道厚生連網走厚生病院医療技術部放射線技術科,2JA北海道厚生連網走厚生病院内科消化器科

【目的】胆嚢隆起性病変の鑑別診断におけるソナゾイド®を用いた造影超音波検査の有用性について検討する.
【対象】2008年10月から2011年4月までに当院にてソナゾイド®造影超音波検査を施行し,病理学的または総合画像診断にて診断が確定した胆嚢ポリープ5例,胆嚢腺筋腫症8例,胆嚢癌2例である.
【方法と検討項目】Bモードにて胆嚢隆起性病変の最大断面になる部位を描出し,造影モードに切り換えてソナゾイド®を0.5ml投与し,低音圧連続送信にて観察を行った.Mechanical Indexは0.2〜0.3,frame rate 15〜30fps,focus pointは病変の下端1cmに設定した.各疾患における染影パタンと輝度変化曲線(TIC:Time Intensity Curve)の検討を行った.
【結果】胆嚢隆起性病変の染影パタンは線状型(linear type),点状散在型(scattered type),点状びまん型(diffuse type),樹枝状型(branched type)の4型に分類された.染影パタンにおける疾患別内訳は線状型は3例に認め,全例胆嚢ポリープであった.点状散在型は8例に認め,全例胆嚢腺筋腫症であった.点状びまん型は1例に認め胆嚢ポリープであった.樹枝状型は3例に認め,胆嚢ポリープ1例,胆嚢癌2例であった.輝度変化曲線における各疾患のTIC曲線の立ち上がりに有意差は認めなかった.輝度値の上昇は胆嚢ポリープ 平均16.2dB,胆嚢腺筋腫症 平均12.4dB,胆嚢癌 平均 30.3dBと胆嚢癌にて高く有意差を認めた.(p=0.001)
【まとめ】胆嚢隆起性病変に対する超音波診断としては従来の形態学的診断が基本ではあるが,ソナゾイド®を用いた血流診断を加えることによりリアルタイムに病変内の詳細なflow imageの診断が可能になると考えられた.またTICを作成することにより客観的な良悪性の鑑別診断が行える可能性が示唆された.染影パタンとTICを組み合わせることで胆嚢隆起性病変の質的診断に有用な検査になりうると思われた.

30.体外式超音波検査による肝外胆管癌の右肝動脈浸潤に関する診断能の検討

佐藤 恵美1, 西田 睦1, 工藤 悠輔1, 井上 真美子1, 表原 里実1, 堀江 達則1, 小野寺 祐也2, 平野 聡3, 河上 洋4, 久保田 佳奈子5, 仲 知保1

1北海道大学病院診療支援部,2北海道大学病院放射線診断科,3北海道大学病院腫瘍外科,4北海道大学病院消化器内科,5北海道大学病院病理部

【目的】肝外胆管癌の右肝動脈(RHA)浸潤の診断は外科的切除の術式決定や予後予測において重要である.今回我々は体外式超音波検査(US)による肝外胆管癌のRHA浸潤の診断能について,US所見と組織学的所見との対比検討を行った.
【対象・方法】対象は2008年3月〜2011年3月に当院でUS施行後,肝外胆管癌の診断で肝右葉切除が施行され,組織学的に診断された胆管癌35例(男性26例,女性9例,平均年齢67.7±9.5歳).装置はTOSHIBA社製Aplio XG,GE社製LOGIQ E9,プローブは375BT/674BT,C1-5を使用した.RHA浸潤の評価は,1名の読影者がブラインドにてretrospectiveに行った.B-mode,Doppler US,造影USによる総合評価にて腫瘍によるRHA内腔の狭小化を認めるものを浸潤ありとし,その診断能を検討した.
【結果・考察】35例中2例(5.7%)はRHAの描出不良例であり評価困難であった.評価可能であった33例の組織学的RHA浸潤は,pA0;27例,pA1;6例であり,USによる診断能は,感度83.3%,特異度85.1%,正診率84.8%,陽性的中率55.6%,陰性的中率95.8%.偽陰性は1例,偽陽性4例であった.偽陽性はRHAと腫瘍の境界が不明瞭またはRHA周囲を3/4周性に腫瘍が取り囲んでいる例であり,ごく軽度の狭小化例であった.RHA浸潤を正診した5例では明らかな狭小化を認めた.RHAが腫瘍に接している場合や腫瘍により取り囲まれている場合はRHA浸潤の過大評価の可能性を考慮し慎重に評価すべきと考えられた.
【結語】USによる胆外胆管癌のRHA浸潤有無の正診率は84.8%であり,術式決定に有用である可能性が示唆された.

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