公益社団法人日本超音波医学会|The Japan Society of Ultrasonics in Medicine

機器及び安全に関する委員会

日本超音波医学会安全委員会working group報告 -No1-

日本超音波医学会安全委員会working groupは、今年度の研究テーマの内まず以下の調査を行ったので途中経過を報告する。


平成9年10月13日

日本超音波医学会安全委員会working group

  • 名取道也
  • 梅村晋一郎
  • 工藤信樹
  • 椎名 毅
  • 竹内康人
  • 土屋健伸

日本超音波医学会安全委員会working group(以下WGと略)は 「アメリカやヨーロッパ等諸外国における超音波造影剤の安全性に関する、 現状での規制等に関する調査研究」につき、以下の調査を行った。

  1. 超音波の安全性に関する国際的コンセンサス調査の方法
    現在までに超音波の安全性に関する国際的コンセンサスに関連する文書としては、 1996年4月Kloster-Bnazでまとめられた、WFUMB安全委員会抄録のみと言える。 そこで本WGではこのとりまとめ役である豪州CSIROの S.Barnett(WFUMB安全委員会副委員長)と共に、 WFUMB安全委員会抄録と最近の文献調査の結果から 超音波の安全性に関する国際的コンセンサスに関するまとめを行った。 まず,データベース(medline)から超音波安全に関連する 最近5年間(1993-1997)の394論文を抽出した。 次にこれを重要度からみて3つに分類し、 検討の対象とするべきと判断された63文献につき 熱作用、非熱(機械的)作用、超音波造影剤(超音波増感剤、コントラスト剤)、 ヒト胎児への照射の作用、動物胎児への照射の作用の5項目に分類して 国際的コンセンサスと言える範囲の確認を行った。
  2. 超音波の安全性に関する国際的コンセンサス
    • 熱作用
      超音波の熱作用に関しては、WFUMBとしての合意に達していると言える。
      • 動物実験での検討結果によれば、体内での温度上昇が1.5度以下であれば、 長時間継続した場合も熱作用を生じる可能性は低い。
      • 4度以上の温度上昇が5分間以上継続した場合、 もしくは2度以上の温度上昇が30分間以上継続した場合には、 熱作用を生じる可能性がある。
      • thermal index(TI)はAIUM/NEMAによる米国の国内基準であり、 国際的コンセンサスではないが、 実際に米国内で販売される製品に反映されているため 多くの製造会社がこの指標を表示している事実は無視できない。
    • 非熱(機械的)作用
      超音波の非熱作用に関しては、 WFUMBとしての合意に完全に達しているとは言えない。 現状での本WGにおけるコンセンサスとしては、
      • MIは、負圧の最大値(MPa)を周波数の平方根で割った式で定義され、 ある特定の条件下での実験データに基づいた実験式である。
      • MI≧1では、キャビテーションが発生する可能性が高い。
    • 超音波造影剤
      超音波の非熱作用に関しては、WFUMBとしての合意は無い。 現状での本WGにおけるコンセンサスとしては、
      • 生体内に投与されたコントラスト剤は、 生体内でinertial cavitation発生の可能性を増やすことがある。
      • いくつかのコントラスト剤では、超音波照射下では寿命が短かくなる。
    • ヒト胎児への照射の作用
      超音波のヒト胎児への照射の作用に関しては、 WFUMBとしての合意は無く、検討中である。
    • 動物胎仔への照射の作用
      超音波の動物胎仔への照射の作用について、 熱作用に関してはWFUMBは上記 "熱作用"の項の内容をもって見解としている。 非熱作用に関しては,検討中である。
  3. アメリカやヨーロッパ等諸外国における超音波造影剤の安全性に関する、 現状での規制等
    現状で、診断用超音波装置の出力に関する規制としては、 我が国の日本工業規格(JIS)、米国のFDA510Kがある。 各国の超音波学会や製造者団体の持つルールのうち、 確認されたものでは米国のtruck1,truck2、truck3とする分類 およびtruck3の装置に関してのthermal index(TI)、mechanical index(MI)の 表示義務である。世界各国の状況については、 S.Barnettが現在調査・集計中である。
    超音波造影剤に関する諸外国における規制は現状では確認されていない。 国内では一種類の薬剤が一旦臨床応用された後、 製薬会社が輸入を中止したため事実上わが国での臨床応用は中断している。